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社説

ご結婚60年の美智子さま 時代と共に築いた皇后像

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 天皇陛下と美智子さまは60年前の4月10日に結婚された。皇居ではきょう、皇族や三権の長が参加してご結婚60年の祝賀行事が行われる。

     陛下の退位に伴い、間もなく上皇后となる美智子さまの足跡を振り返る時、私たちはその存在の大きさを感じずにはいられない。

     1958年、24歳の時に皇太子さまとの婚約が発表されると、社会には「ミッチーブーム」が湧き起こった。旧皇族や元華族ではなく、民間から初めてとなる皇太子妃を多くの国民が歓迎した。

     戦後の新憲法は男女平等や、両性の合意に基づく婚姻の自由をうたった。お二人の婚約は、古い慣習や秩序から決別する新しい時代の到来と受けとめられた。その2年前、経済白書が「もはや戦後ではない」と記し、日本が高度経済成長へと転換する時期でもあった。

    国民との距離を縮めた

     お二人が、子供たちを手元に置いて育てたことも皇室では初めての試みだった。仲むつまじい一家のご様子が映像で伝えられると、国民には現代的な理想の家族像と映った。

     それまで皇室では親が直接、養育することはなく、乳人(めのと)といわれる乳母や傅育官(ふいくかん)らが担った。両親の元で育てられた子供として、皇太子さまが初めて天皇に即位される。

     美智子さまは幼いころに大人から聞いた1匹のでんでん虫の童話を心に留めてきた。

     でんでん虫はある日突然、自分の背中の殻に悲しみがいっぱい詰まっていることに気づく。友だちにその不幸を伝えたが、誰もが「私の背中にも悲しみはいっぱい詰まっている」と答える。

     美智子さまは98年、インドで開かれた国際児童図書評議会の世界大会での基調講演で、この童話に触れた。「生きていくということは、楽なことではないのだという、何とはない不安を感じることもありました。それでも、私は、この話が決して嫌いではありませんでした」

     繊細な少女は大きくなり、皇后になってからも、人の背負う悲しみに寄り添い続けた。

     経済が長く低迷する中で、大きな災害が相次いだ平成の時代に、皇室への国民の関心は高まった。

     両陛下は被災地を訪れ、避難所で膝をついて被災者を慰め、励ました。全国の福祉施設やハンセン病療養所も何度も訪問した。

     美智子さまは、平成流の象徴像を模索する陛下を支え続けた。国内外の慰霊の旅、離島の訪問でも傍らには常に美智子さまの姿があった。陛下の長い旅の同伴者だった。

     美智子さまのことばからは、日本の近代化や戦後の歴史への幅広い理解がうかがえた。

     2013年の誕生日に際しては、明治憲法の公布前に東京の多摩地方で起草され、基本的人権や法の下の平等も含まれる「五日市憲法草案」に言及し、「深い感銘を覚えた」と述べた。

    人の悲しみに寄り添い

     またこの時、12年に亡くなった親しい友人の一人として、連合国軍総司令部(GHQ)民政局員で日本国憲法の男女平等条項などを起草した米国人女性、ベアテ・シロタ・ゴードンさんの名前を挙げ、「日本における女性の人権の尊重を新憲法に反映させた」と述べた。

     しかし今日に至る道のりは平坦(へいたん)ではなかった。93年には週刊誌を中心として「皇后バッシング」が続き、体調を崩した。

     ご自身も昨年10月、84歳の誕生日にあたり、「皇太子妃、皇后という立場を生きることは、私にとり決して易しいことではありませんでした」と振り返った。

     陛下は、平成最後の誕生日に際した記者会見で、時折、声を震わせて「心からねぎらいたく思います」と語った。美智子さまへの深い信頼と感謝のお気持ちを率直に表現した。

     美智子さまが折に触れて詠んだ短歌には豊かな感性があふれる。

     04年10月、新潟県中越地震で、土砂崩れによって母と姉を亡くしながら奇跡的に救助された2歳の皆川優太ちゃんを詠んだ歌がある。

     <天狼(てんらう)の眼も守りしか土(つち)なかに生きゆくりなく幼児(をさなご)還(かへ)る>

     秋の夜空に輝く星も、この子をきっと見守ってくれたのだろう、と安堵(あんど)する母のようである。

     日本がつらく、悲しい経験を乗り越え、前へ進まなければならない時代の中で、美智子さまは新たな皇后像を築いた。

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