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本庶氏「オプジーボ利益など分配額引き上げを」 小野薬品との協議再開訴え

治療薬の特許について、弁護士らとともに記者会見する本庶佑・京都大特別教授(左)=京都市左京区で2019年4月10日午後4時58分、川平愛撮影

 昨年のノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑(ほんじょ・たすく)・京都大特別教授は10日、京都市内で記者会見した。がん免疫治療薬「オプジーボ」を共同開発した小野薬品工業(大阪市)に対し、特許使用料の分配額の引き上げを求めた。本庶氏は「不正確な説明で異常に低い配分率の契約をした。公正な評価をしてもらわないと日本の生命科学はだめになる」と早期の協議再開を訴えた。

 同社は、本庶氏が発見した免疫の働きにブレーキをかけるたんぱく質「PD―1」に着目。これを取り除くことで、がん細胞を攻撃する新薬「オプジーボ」を開発し、2014年9月から販売している。16年度は国内売上高1039億円を記録。海外の製薬企業からも1000億円単位の特許使用料を得ている。特許権の持ち分は本庶氏と同社が半分ずつ保有している。だが、これまでの本庶氏への支払額は26億円。本庶氏は納得できずに全額を法務局に供託している。

 本庶氏側は会見で、06年に同社とPD―1の特許契約を結んだ際、自身が受け取る対価について、「不正確な説明で十分理解しないまま契約してしまった」と説明。その結果、オプジーボの売上高に応じた配分率は0・75%前後と極めて低く抑えられたと主張した。

 11年以降、同社と配分率の再交渉を進め、13年には引き上げ提案も受けたが、その後立ち消えとなり、昨年11月から協議が途絶えたという。本庶氏は「(成果に対して)正当な評価をすることが日本の学術界だけでなく、長期的に見て産業界にもメリットになる」と語った。

 本庶氏は受賞後、京大の若手研究者への給与や研究費の支援を目的に、「本庶佑有志基金」を学内に新設。基金はノーベル賞の賞金のほか、特許使用料などを見込み、総額1000億円規模を目指している。

小野薬品工業「特許使用料話し合い、続けている」

 本庶氏の記者会見を受け、小野薬品工業は「本庶氏の主張を正確に把握できておらず、現時点で話はできない。特許使用料の引き上げを含めた話し合いは弁護士を介して今も続けている」と取材に話した。

【阿部周一、菅沼舞】

識者「契約時に将来を予見することは難しい」

 研究者と企業は研究開発の初期段階で発明の対価に関する契約を結ぶことが多く、将来的に発明者にとって妥当な対価にならない場合もある。過去には研究者が正当な報酬を求め、訴訟に発展した事例もある。

 発明の対価を巡る訴訟は、2000年代以降に注目され始めた。オリンパスの元従業員が、ビデオディスク装置の特許を巡って同社を提訴。最高裁は03年4月に「会社が決めた報奨額が発明の対価に満たない時は、従業員は不足額を求めることができる」とし、同社に約230万円の支払いを命じた。

 14年にノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏も、青色発光ダイオード(LED)の発明対価を求め、過去に勤めていた日亜化学工業を訴えている。東京地裁は04年、200億円の支払いを命じる判決を出し、8億円超での和解が成立した。こうした動きを背景に、政府は16年に改正特許法を施行し、社員が会社で行った発明の特許権を「会社のもの」と定めた。

 だが、本庶佑京都大特別教授は企業の社員ではなく、特許を企業と共同保有している。隅蔵康一・政策研究大学院大教授(知的財産政策)によると、研究者と企業との契約は、将来の市場規模が分からない段階で結ばれることが多い。隅蔵教授は「契約時に将来を予見することは難しい。発明者が正当な対価を得るには、契約に見直し条項を盛り込むなどの対応が必要だ」と指摘した。【鳥井真平、渡辺諒】

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