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ブラックホール初撮影 結実した科学の国際協力

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 間接的にしか存在が確認されていなかったブラックホールの姿が、目に見える画像として初めて撮影されたことを喜びたい。

 国際共同研究チームが、世界各地の電波望遠鏡をつなぎ、月面上のテニスボールを見分けるほどの解像度を実現した成果だ。宇宙観測の新時代が幕を開けたと言える。

 ブラックホールの存在は約100年前、アインシュタインの一般相対性理論に基づき予言されていた。しかし、強大な重力を持ち、光すら脱出できない暗黒の天体のため、視覚的に捉えることができなかった。

 相対性理論の更なる検証や銀河の形成過程解明など、宇宙の謎に迫る知見が得られることを期待したい。

 撮影されたのは、地球から約5500万光年離れた銀河「M87」の中心部にある巨大ブラックホールだ。

 研究チームは、南米チリの「アルマ」や南極など世界6カ所の電波望遠鏡の観測データを解析し、リング状のガスの輝きの中に「黒い穴」が開いている姿を描き出した。ブラックホールから光すら抜け出せなくなる境界は「事象の地平面」と呼ばれ、この穴の内側にあるという。

 研究チームには、日米欧をはじめ中国や台湾など17カ国・地域から200人以上が参加する。観測成功の最大のポイントは、地球規模で望遠鏡を連携させたことだ。国境を越えた協力が結実した偉業で、発表が日米の他、中国や台湾でも同時に行われたことがそれを象徴している。

 画像を鮮明にするデータ処理技術を開発するなど、日本の研究者たちの貢献もたたえたい。

 より遠方のブラックホールが撮影できれば、ブラックホールの進化の過程が追跡可能となる。宇宙に電波望遠鏡を打ち上げて地上と連携すれば、解像度が更に高まる。今後の観測の進展が楽しみだ。

 ブラックホール研究が、日常生活に直接役立つわけではない。だが、「宇宙とは何か」という根源的な問いかけに応え、人類の「知の地平」を広げる試みを大切にしたい。

 米中露を中心に、宇宙の軍事利用競争が進む。世界の研究者たちが国境の壁を越えて手を携え、国際協力で成果を出した意義は大きい。

 若者が科学に興味を持つ、新たなきっかけにもなるはずだ。

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