メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

公文書クライシス

「面談中の首相発言、記録はご法度」 元秘書官ら文書管理の一端明かす

小泉政権時代の旧首相官邸首相執務室=2002年4月26日、代表撮影

[PR]

 「良き首相秘書官は余計な記録やメモを残さない」「面談中の首相の発言の記録はご法度だ」――。毎日新聞が首相と省庁幹部の約1年分の面談記録などを情報公開請求したところ、首相官邸にも省庁側にも議事録は「不存在」などとされた。なぜ、記録を残さないのか。首相秘書官経験者や省庁幹部らは、官邸や中央省庁の文書管理の一端を明かした。【大場弘行、松本惇】

 「総理秘書官は見たものも聞いたことも、自分の頭の中に収めるだけにする。いつでも記録を消し去ることができる『黒板』みたいな存在が理想とされている」

 こう語るのは、小泉純一郎首相の秘書官を2001年から約4年半務めた小野次郎氏(65)だ。在任中の小泉氏は日記を付けず、会議が終われば省庁作成の説明資料をテーブルの上に置いたまま立ち去る首相だった。

 小泉氏は、ある政治家から「宰相録」をまとめるよう勧められたこともあった。宰相録を作るなら秘書官の記録が頼りになるが、小野氏が「私のとりえは記録を何も残さないことです。もらったものまで捨てています」と言うと、小泉首相は「それでいい」とうなずいたという。

 官邸は外国首脳との面談や特産物をPRする地方団体の表敬訪問などは公表しているが、省庁幹部との面談は公表していない。毎日新聞が府省幹部との面談16件の記録を開示請求すると、役所側は議事録など首相とのやりとりの記録の保有は一件も認めなかった。

 なぜ議事録がないのか。ある省の幹部は「首相の目の前ではメモは取れない。見つかれば、次の面談から入れてもらえなくなる」と打ち明けた。別の省の幹部たちは「メモはまずいので、ポケットに録音機を忍ばせて臨んだ」「幹部は面談後、記憶した首相とのやり取りを部下に口頭で伝えてメモを作らせている」と証言した。「官邸ににらまれるので、公文書扱いにはしていない」と話した幹部もいた。

 小野氏も首相との面談中に詳細にメモを取る官僚を見つけると、「途中のやりとりはメモしなくていい」と注意していたという。小野氏は「記録されると本音で話せなくなるし、大事な局面で柔軟な判断ができなくなる。総理も人間だから面談中に的外れの質問をすることもある。権力の中枢は記録を残さない『暗室』にしておいた方がいい」と語る。

 一方で小野氏はこうくぎを刺す。「記録を残さないことを国民に納得してもらうには、権力の私物化は絶対にしないという大前提が必要だ。森友・加計学園の問題で権力の私物化が疑われたなかで、政府は『記録はない』と繰り返した。その姿をみると、大前提を忘れてしまっているように思えてならない」

説明資料管理ずさん、首相経験者も不備指摘

 首相が省庁幹部と官邸で面談する際に使われる説明資料を巡っては、首相経験者からも管理の不備を指摘する声が上がっている。

 鳩山由紀夫元首相によると、在任中(2009~10年)に官邸で外務省から渡された説明資料が同省内で見つからなくなっている。鳩山氏が掲げた沖縄・米軍普天間飛行場の県外移設を断念するきっかけになった資料で、県外に移設すると在日米軍の運用に支障が出るなどと記載されていたという。

 一方、公文書管理法の制定を主導した福田康夫元首相(在任07~08年)は今年1月の毎日新聞の紙上で、説明資料の保有先が多くの省庁の関係部局に分散しているうえ、首相の記録としてではなく政策ごとに分類・管理されていると証言。年数がたつほどに探しづらくなり、廃棄や散逸の恐れが高まると指摘した。

 このため福田氏は、首相が自ら保有する資料を退任時に保存するルールの策定▽省庁に分散する首相関係記録の一元管理▽首相直属の記録補佐官の創設――などを提言し、「日本の政治、行政のトップの記録は残して当然だ」と訴えた。

 これに対し、安倍晋三首相は今年2月の国会審議で野党議員に説明資料の管理について問われ「各行政機関の責任で適正に管理すべきだ」と答弁したものの、自ら保有する資料の管理実態やルールの必要性には言及しなかった。

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 記者も身を寄せた避難所 「体育館で雑魚寝」でいいのか

  2. ラグビーW杯 日本、4強入りならず 南アに3-26

  3. 水浸し、満員、夜の冷え込み…気詰まり避難所 想定外? 準備不足?

  4. 台風19号 寝室で増水 目の前で夫「世話になったな」…86歳妻「1人はつらい」福島・いわき 

  5. 「僅差で可決」覆した緊急動議 残留への潮目変わるか 英EU離脱審議

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです