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東京へ ともに歩む

毎日新聞

田南部力コーチ(下)と公開練習で調整する57キロ級の伊調馨=東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで2019年4月10日、宮武祐希撮影

Passion

レスリング・伊調 リオ五輪以来の国際大会へ闘志

多くの報道陣が集まった公開練習で調整する57キロ級の伊調馨(右)=東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで2019年4月10日、宮武祐希撮影

 レスリング女子で五輪4連覇中の伊調馨(34)=ALSOK=が23日から中国・西安で行われるアジア選手権に出場する。国際大会は2016年リオデジャネイロ五輪以来で、20年東京五輪に向けた試金石になる。「自分にとっては、大一番」。前人未到の五輪5連覇を狙う女王の目つきが、鋭さを増してきた。

     今月10日、伊調は東京都内で復帰後初めて練習を公開した。気迫を前面に出すことはない。淡々と、かつ入念に一つ一つの動きを確認した。「激しい動きをするのではなく、ゆっくりと正確に技の確認をするようになった」。ベテランらしく、体調と相談しながら練習するようになった。

     出場する57キロ級には、昨年の世界選手権覇者の栄寧寧(中国)がいる。21歳の新鋭で対戦経験はない。国際舞台から2年半以上離れていた伊調にとって、勢力図ががらりと変わった今大会は「自分の実力を測ることができる。楽しみも、不安もある」という。所属先の大橋正教監督(54)は「久々の国際大会だが、世界選手権(9月・カザフスタン)を見据え手応えをつかんでほしい」と期待を寄せる。

     リオ五輪後の休養中は、日本協会の栄和人前強化本部長(58)によるパワーハラスメント問題の渦中に置かれ、競技を続けることを自問した時期もあった。だが、乗り越えた今は、「練習がすごく楽しい」と笑う。昨年10月の復帰戦以来、短い髪形を維持しているのも「結んでいる時間がすごくもったいない。1秒でも2秒でも多く練習で相手に触っていたいから」。求道者の伊調らしい理由だ。

     昨年12月の全日本選手権は、決勝でリオ五輪金メダルの川井梨紗子(24)=ジャパンビバレッジ=に残り10秒から逆転して優勝した。今年6月の全日本選抜選手権も優勝すれば、世界選手権代表となり、世界選手権メダル獲得で東京五輪代表に内定する。復帰当初は「モヤモヤ、というか真っ暗」という東京五輪への道が、復活優勝の自信で、照らし出されるようになった。

    公開練習で笑顔を見せる57キロ級の伊調馨(左)=東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで2019年4月10日、宮武祐希撮影

     だからこそ、本人は「まだ理想の状態と比べると8割未満」と厳しく自己評価する。指導する田南部力コーチ(43)は「一気に休養前の状態には戻せない。徐々に状態を上げていかないと、壊れてしまう」と、年齢や痛みを抱える両足首の古傷などを考慮しながらの作業に時間がかかる見通しを示した。それでも「半端な気持ちでは目指せない」と公言していた五輪への思いを頻繁に口にするようになったのは、伊調が覚悟を決めた表れでもある。

     ともに国民栄誉賞を受賞して一時代を築いた吉田沙保里さん(36)が現役引退し、伊調にとって「レスリングに(全てを)ささげた」という平成が終わる。「(競技をする)幸せや喜びをかみしめながら挑戦できるというのは、うれしいこと。『令和』でも活躍したい」。アジア選手権で伊調は26日に出場予定。平成最後の大会で、まずはアジアに「女王健在」を見せつけ、新時代に弾みをつける。【倉沢仁志】

    倉沢仁志

    毎日新聞東京本社運動部。1987年、長野県生まれ。2010年入社。高知、和歌山両支局を経て17年から東京運動部。レスリング、重量挙げなどを担当。高校時代には重量挙げで全国高校総体に出場したが、階級で10キロ以上軽い三宅宏実選手の記録には遠く及ばない。