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社説

福生病院への東京都検査 「指導」で済む問題なのか

 医療技術の進歩で終末期になっても人工的に生きられるようになった。いつまで医療行為を続けるか、中止するとすれば誰がどのような判断で決めるのか。切実な問題だ。

     公立福生病院(東京都福生市)で人工透析治療の中止で患者が死亡したことについて都が検査した。死亡した患者24人のうち21人は「意思確認書」がなかったという。

     都は患者の意思確認が不十分だったとして、医療法に基づき院長を文書で指導し、改善に向けた報告書の提出を求めた。

     しかし、「文書で指導」程度で済む問題なのだろうか。

     一般的に、終末期ではない患者の治療を中止して死亡すれば医師は罪に問われる恐れがある。日本透析医学会のガイドラインで治療中止を認めているのは「患者の全身状態が極めて不良」などの場合に限られる。

     昨年8月に亡くなった女性には中止の意思を撤回できる点を医師が説明していなかった。治療を希望して来院した別の患者には透析のつらさを強調し、翻意させたという。

     不安や苦痛で患者の心理は揺れ続けるものだ。知識が豊富な医師が、詳しくない患者に透析をしない選択肢へ誘導していると見られても仕方がないだろう。

     都の検査は病院から提供されたカルテなど関係資料の分析にとどまる。患者の家族や医師以外の病院職員からの聞き取りなど、もっと踏み込んだ調査が必要だ。患者が「終末期」と言える状態だったかどうかも精査すべきではないか。

     腎臓病患者は増えており、人工透析は現在約33万人が受けている。終末期になって治療中止の判断を迫られるケースはどこでも起こり得る。

     医療現場にガイドラインの順守を徹底させるべきだ。患者や家族が担当医の説明に疑問を感じたとき、別の医療機関に意見を求められるようにすることも必要だろう。

     人工透析の費用は総額1・6兆円に上り、医療費抑制の課題とされることが多い。終末期になっても患者の意思を確かめずに透析を続ける医療機関が多いのも事実だ。

     患者の尊厳を守ることを基本に、終末期医療のあり方を冷静に考えるべきだ。福生病院の治療中止はそうした議論に水を差すものである。

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