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新元号「令和」の出典 「万葉集」が伝える古代の言の葉

「西本願寺本万葉集」(複製)に記された「令月気淑風和……」の部分=高岡市伏木一宮の市万葉歴史館で2019年4月3日、青山郁子撮影

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大伴旅人(中央奥の紫の衣装)の邸宅で開かれた「梅花の宴」の様子を博多人形で再現した模型=福岡県太宰府市の大宰府展示館で2019年4月1日、野田武撮影

 5がつついたちからの新元号しんげんごうが「令和れいわ」にまりました。出典しゅってんとなったのは、古代こだい歌集かしゅう万葉集まんようしゅう」の「うめのはなのうたさんじゅうしゅ」のまえしるされた序文じょぶんでした。万葉集まんようしゅうはどんな歌集かしゅうなのでしょう。古代こだい人々ひとびとがつむいだ言葉ことばいまなにつたえるのでしょうか。【望月もちづき麻紀まき】(監修かんしゅう 小松こまつ靖彦やすひこ青山学院大学あおやまがくいんだいがく教授きょうじゅ

    令和れいわ」ここから

    まき 梅花うめのはなのうたさんじゅうしゅ序文じょぶん

     ※序文じょぶんは、うたつくられたとき様子ようすしるしたものです。中国ちゅうごく古来こらい言葉ことばである漢文かんぶんかれています。天平てんぴょう2(730)ねん正月しょうがつに、九州きゅうしゅう太宰府だざいふ大伴旅人おおとものたびとたくひらかれたといわれる宴席えんせき発表はっぴょうされたうた32しゅまえに、この情景じょうけいうつくしくえがいています。

    原文げんぶん

    初春令月 気淑風和 梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香

    くだぶん

    初春しょしゅんれいげつにして、かぜやわら

    うめきょうぜんひらき、らんはいこうかおらす

    現代語げんだいごやく

     初春しょしゅんつきうるわしくかぜおだやかだ。うめはな鏡台きょうだいまえのおしろいのようないろひらき、らんこしけるにおぶくろあとただよこうのようにかおっている。

    時代じだいごとの代表だいひょうてき歌人かじんうた

     ◆だい(672ねん壬申じんしんらんまで)

     大化たいか改新かいしん壬申じんしんらんなど政治せいじうご激動げきどう時代じだい作者さくしゃおも天皇てんのう皇族こうぞく

    歌人かじん 天智てんじ天皇てんのう天武てんむ天皇てんのう額田ぬかたのおおきみ

    代表だいひょうするうた

    熟田にきたに 船乗ふなのりせむと つきてば

    しほもかなひぬ いまでな(額田王ぬかたのおおきみ巻一まきいち・八)

    現代語げんだいごやく熟田にきたいま愛媛県えひめけん松山市まつやまし近郊きんこうにあったみなと)で船出ふなでをしようとつきっていると、つきしおちてきた。さあいまこそそうぞ。

     ◆だい(710ねん平城へいじょう遷都せんとまで)

     律令制りつりょうせいという政治せいじ仕組しくみをととのえていく新時代しんじだいに、力強ちからづようたつくられる

    歌人かじん とう天皇てんのう柿本人麻呂かきのもとのひとまろ

    代表だいひょうするうた

    小竹ささは みやまもさやに さやげども

    あれいもおもふ わかぬれば(柿本人麻呂かきのもとのひとまろまき・一三三)

    現代語げんだいごやく)ささのやま全体ぜんたいひびわたるようにざわめくけれども、わたしはあなたのことをおもう。わかれててしまったから。

     ◆だい(733ねんまで)

    さかんな国際交流こくさいこうりゅう中国文化ちゅうごくぶんか影響えいきょうも。宮廷きゅうてい歌人かじん活躍かつやく

    歌人かじん 大伴旅人おおとものたびと山上憶良やまのうえのおくら山部やまべの赤人あかひと

    代表だいひょうするうた

    わがそのに うめはなる ひさかたの

    あめよりゆきの ながるかも(大伴旅人おおとものたびとまき・八二二)

    現代語げんだいごやくわたしにわうめはなる。はるかとおくのてんからゆきってくるのだろうか。(「ひさかた」は「天」のまえまくらことば)

     ◆だい(759ねんまで)

    藤原氏ふじわらし皇族こうぞくらの対立たいりつはげしくなる。みやびうたがある一方いっぽうで、不安ふあんこころうつしたうた

    歌人かじん かさの女郎いらつめ大伴家持おおとものやかもち

    代表だいひょうするうた

    うらうらに れる春日はるひに ひばりがり

    こころかなしも ひとりしおもへば(大伴家持おおとものやかもちまきじゅう・四二九二)

    現代語げんだいごやく)のどかにっているはるひかりなかに、ひばりがまっすぐにそらたかのぼり、こころうちにはえがたいかなしみがちている。たったひとりでおもうと。

    まんようしゅうって?

     現存げんそんする日本にほん最古さいこ歌集かしゅうです。おも飛鳥あすか時代じだいから奈良時代ならじだいうたけいやく4500しゅが20かんおさめられています。できあがったのは8世紀末せいきまつとみられています。いまからやく1200ねんまえです。

     20かんぶんうたいちあつめて編集へんしゅうしたのではありません。がれながら、うたえ、最終的さいしゅうてきには奈良時代ならじだい貴族きぞく歌人かじん大伴家持おおとものやかもちによってまとめられたとかんがえられています。

    いまのこっているの?

     原本げんぽんはありません。現在げんざいのこっている最古さいこ写本しゃほんうつしたもの)は、平安時代へいあんじだい中期ちゅうきつくられたもので、それも一部いちぶぶんしかのこっていません。20かんそろったもっとふる写本しゃほんは、石川武美記念図書館いしかわたけよしきねんとしょかん東京とうきょう)が所蔵しょぞうしている鎌倉時代かまくらじだい後期こうき写本しゃほんで「西本願寺にしほんがんじぼん万葉集まんようしゅう」とばれています。

    万葉集まんようしゅうからどんなことがかるの?

     うたとおして、古代こだいひとたちのせいかたつたわってきます。青山学院大学あおやまがくいんだいがく教授きょうじゅ日本文学にほんぶんがく)の小松こまつ靖彦やすひこさんは万葉集まんようしゅう魅力みりょくを「古代こだいひとたちが、きることのよろこびやくるしみをみがかれた言葉ことば表現ひょうげんしているところ」と説明せつめいします。また、ひとひとつのうたまれた「おもい」のほかに、歌集かしゅうにまとめたねらいがあります。「天皇てんのう中心ちゅうしんとした理想りそうてき政治せいじのありかたうたしめしています。日本にっぽんだけでなく、古代こだい文化ぶんかおう宮廷きゅうてい中心ちゅうしんこってきました。古代こだいおう物語ものがたり各地かくちにあり、万葉集まんようしゅうもそのひとつです」

     1200ねんあいだには、いろいろなまれかたをしてきました。平安時代へいあんじだいにはみやびなうたこのまれ、第二次世界大戦だいにじせかいたいせんちゅうには「天皇てんのうのためにたたかう」という気持きもちをたかめるための戦意高揚せんいこうよう教材きょうざいだったこともあります。小松こまつさんは「どのようにまれてきたのか、その歴史れきしることも大切たいせつです」とはなしています。

    全部ぜんぶ漢字かんじかれていたの?

     奈良時代ならじだい日本にっぽんには、ひらがなやカタカナといった仮名文字かなもじはまだありませんでした。文字もじは、すでに中国ちゅうごくからつたわっていた漢字かんじだけでした。

     そのため万葉集まんようしゅうでは、おと漢字かんじあらわす「万葉仮名まんようがな」がもちいられました。音読おんよみを利用りようしているものもあれば、訓読くんよみを利用りようする場合ばあいもあります。れいしめします。

    こころ音読おんよみを利用りよう

    なつかし→なつかし訓読くんよみを利用りよう

     すべてを万葉仮名まんようがなだけでいていたわけではありません。意味いみあらわす「正訓せいくん」などの漢字かんじ使つかわれていました。たとえば「ひがし」「」「つき」などです。

     いずれにしても漢字かんじですから、漢字かんじだけの漢文かんぶんのようでした。実際じっさいにどのようにかれていたかというと、つぎのようになります。

    原文げんぶん

    東野炎立所見而反見為者月西渡

    くだぶん

    ひむがしの かぎろひの えて 

    かへりすれば つきかたぶきぬ

    現代語げんだいごやくひがしに、ほのおのようにかがやあかつきひかりあらわれるのがえて、かえってみるとつき西にしそらかたむいていた。

     当時とうじまわしは現代げんだい日本語にほんごとはことなるうえに、「ひがしの」の「の」や「に」の「に」などははぶかれています。意味いみかるように言葉ことばおぎないながらくだすのは簡単かんたんではありません。なにをどうんだものかが、いまなおはっきりしないうたがあります。

    おさめられているのはどんなうた

     内容ないよううたかたちはさまざまです。恋心こいごころんだ「相聞そうもん」、くなったひといたむ「挽歌ばんか」、それ以外いがい儀式ぎしきたび自然しぜんんだ「雑歌ぞうか」があります。うたかたちは、ほとんどが短歌たんかですが、長歌ちょうか旋頭歌せどうかなどもあります。

     天皇てんのう中心ちゅうしん多様たよう人々ひとびとんだうたおさめられています。貴族きぞく歌人かじん柿本人麻呂かきのもとのひとまろ皇族こうぞくにささげるうた挽歌ばんかすぐれていました。おなじく貴族きぞく歌人かじん山上憶良やまのうえのおくらは、まずしさにあえぐ人々ひとびと姿すがたえがいた「貧窮問答歌ひんきゅうもんどうか」をのこしました。東国とうごくばれた東北とうほく関東地方かんとうちほう人々ひとびとの「東歌あずまうた」や、九州北部きゅうしゅうほくぶ防衛ぼうえいされた防人さきもりやその家族かぞくんだ「防人さきもりのうた」もあります。やく半数はんすううたは、だれんだものか記録きろくがありません。平城京へいじょうきょうらす官人かんにん役人やくにん)とその家族かぞくつくったものとかんがえられています。


     ■?りたいワード

    長歌ちょうか

     五音ごおん七音しちおんのいくつかのかえしのあと最後さいご七音しちおんむすびます。長歌ちょうかうしろにつづける短歌たんかを「反歌はんか」といます。

    短歌たんか

     長歌ちょうかもっとみじかかたち五音ごおん七音しちおんしち)のかえしが1かいしちしちしち

    旋頭歌せどうか

     五音ごおんしちおんしちおんの3のリズムをめぐらす(かえす)うたしちしちしちしち

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