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余録

晩春の季語に「桜蝦」があるのは…

 晩春の季語に「桜(さくら)蝦(えび)」があるのは、例年この時季に駿河湾でとれるサクラエビの天日干しが行われたからだろう。俳人・岡田耿陽(おかだ・こうよう)が昭和初期に詠んだ「桜蝦干せば来るなり浜(はま)鴉(がらす)」が最初にこの季題を用いたそうだ▲サクラエビ漁が始まったのは明治の中ごろで、そう古いことではない。静岡の由比でアジ漁の漁師が偶然に深く入れた網に大量のサクラエビがかかったのがきっかけであった。漁網の発達のおかげで、できるようになった漁だという▲駿河湾のごく限られた水域の特産であるサクラエビの漁は120隻の漁船によって春のほか秋にも行われている。水揚げ額を漁業者の間で均等に分配する「プール制」をとっていることで知られ、資源管理型漁業のお手本ともなった▲そのサクラエビ漁が昨年に続き不漁に苦しんでいる。現地では昨春の記録的不漁を受け、秋漁を休漁して資源回復に期待をかけていた。だが今春も先月26日の初水揚げ後は群れの少ない状態が続き、休漁をくり返す事態となっている▲不漁の原因としては例年より低い海水温が疑われている。その一方で駿河湾に流れ込む富士川水系の濁りと近年の不漁の関係に注目する向きもある。昨年末から水質調査を始めた静岡県は上流の山梨県とも共同調査に取り組むという▲観光客に人気の「桜えびまつり」も中止、漁協直営食堂も休業に追い込んだ海の恵みの異変である。漁業者の資源管理の努力にもかかわらず姿を消したサクラエビの声なき声に耳をすまさねばならない。

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