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ALL FOR 2020

東京へ ともに歩む

毎日新聞

激しい流れの中でバランスを取りながらパドルをこぐ羽根田卓也=富山市の井田川カヌー場で2016年4月3日、三浦博之撮影

アスリート交差点2020

行動が夢を叶える 考えすぎず無になる=カヌー・羽根田卓也

 7日に富山市で行われたジャパンカップ第1戦で勝利し、今季初戦でいいスタートが切れました。先月30日までオーストラリア合宿で体を追い込んだため、疲労も残るなかでのレースでミスもありました。しかし、持ち味のダイナミックさや身のこなしがうまく出て、いい時の感覚を得たレースでした。

     大会会場の井田川は私がカヌーの面白さを知った場所です。今でも流れの速い川ですが、昔はさらに激流で洪水の時に何度も岩が崩れて、コースの形状も変わっているほどです。

     中学生の頃に何度も転覆して流され、恐怖心が芽生えたことを覚えています。カヌーがすごく怖くて嫌だと思うほどでしたが、激流での練習を繰り返して克服すると、カヌーの楽しさを知って、のめりこみました。カヌースラローム界の先輩も含めてみんなが育ってきた、育ての親のような場所です。そこで今季のスイッチが入った気がします。

     今年は来年の東京五輪に向けた代表選考レースが始まります。勝負の年を前に最近、ふと思ったことがあります。それは考えすぎずに無になり、よりシンプルにカヌーをこぐことです。昨季は自分のこだわりや、やりたいことに執着しすぎて、自分の中でしか戦えていなかったと思います。他の選手が見えず、空回りしました。

     高校生の頃から欧州選手の技術を追いかけ、すり切れるぐらいビデオを見てマネをするほど形から入ってきました。拠点にしているスロバキアでも同じです。手本の選手が周りにいて、こぎ方のコピーをすることで確実に実力は上がったと思います。しかし自分にしかできない体の動きや強みはあります。形から入ることで自分の良さを殺してしまっているように思い、意識を変えました。

     良い準備ができて今季に入りました。少しずつ調子を上げて代表を勝ち取り、国際大会でも納得できる成績を出したいと思います。自分に実力が備わっていると確信できるようなシーズンにしたいです。東京五輪に向けていい助走をつけたいと思います。(あすは競泳・渡辺一平です)(タイトルは自筆)


     Q 印象に残る門出や人生の転機は何ですか?

     A 高校3年生の時に欧州で行われたジュニア(18歳以下)の世界大会です。ドイツやチェコ、スロバキアの選手が参戦する試合で予選を1位で通過し、最後は6位で終えました。日本でずっと練習している自分が海外の強豪と張り合えていると自信を深めました。このまま埋もれてしまうのは絶対に嫌だと思い、高校卒業後に欧州を拠点とすることに決めました。欧州に渡ったからこそ、世界で戦える今の自分がいます。世界の表彰台に上り詰めるバラ色の人生が見えたつもりでしたが、簡単ではなく、大きな間違いだったと後でわかりました。若さゆえの恐ろしさも感じました。


     ■人物略歴

    はねだ・たくや

     愛知県豊田市出身。種目はスラローム男子カナディアンシングル。五輪は3大会連続出場。16年リオデジャネイロ大会で、カヌーで日本初メダルとなる銅メダルを獲得した。ミキハウス所属。31歳。