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目に余る職権の乱用と言わざるを得ない。トランプ米大統領が必死になって身に降りかかる捜査をつぶそうとした実態が浮かび上がった。
2016年米大統領選でトランプ陣営を勝たせようとロシアが介入した疑惑を捜査していたモラー特別検察官の報告書が公表された。
トランプ陣営とロシアの「共謀」は認定しなかったが、トランプ氏による司法妨害の判断は見送り、「犯罪行為がなかったと結論づけることはできなかった」と疑念を残した。
驚くのは、報告書に詳述されたトランプ氏による妨害工作の数々だ。
報告書によると、トランプ氏はコミー連邦捜査局(FBI)長官に元側近への捜査を中止するよう要求し、「大統領は捜査対象ではない」と公言することも求めた。コミー氏が応じないと更迭した。
司法省がモラー特別検察官を任命すると、トランプ氏は「私の大統領の地位は終わりだ」と焦り、マクガーン法律顧問にモラー氏解任の書簡を作成するよう指示した。しかし、マクガーン氏は拒否し、辞任した。
セッションズ司法長官には捜査を監視するよう本人や側近を通じて要請したが、捜査に関与しない立場を貫いたため、やはり更迭された。
これらの事実を確認しながら司法妨害の判断を見送ったのは、トランプ氏の意図を立証するのが困難なうえ、現職大統領は訴追できないという伝統的な憲法解釈によるという。
だが、たとえ犯罪と認定されなくても、公正であるべき大統領としてモラルを欠き、その権威を傷つけたのは事実だ。トランプ氏の道義的、政治的責任はまぬがれない。
マクガーン氏は、ウォーターゲート事件を捜査したコックス特別検察官をニクソン大統領が解任し、司法長官らが辞任した1973年の「土曜日の夜の大虐殺」になぞらえた。
法律を順守し、過去の教訓に学んで命令や指示に従わなかった政権幹部がいたことは、せめてもの救いだ。モラー氏の解任にも捜査の中止にも至らなかった。
報告書は「大統領の職権乱用」を監視する議会の役割にも言及した。トランプ氏は「ゲームオーバー」と決着を強調するが、野党・民主党はモラー氏の議会証言を求めており、これで幕引きとはならないだろう。