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華恵の本と私の物語

/33 四月は少しつめたくて

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 かえりのかいあいだ、ミサのかたにぐっとちからはいっているのがわかった。

 「みなさん、さよーなら!」

 あいさつがわると、まえせきりくくんがく。

 「またあしたな、ミサ」

 「うっせーよ」

 つっけんどんにう。

 「……なんかおこってる?」

 ミサは「はっ?」とをつりげた。

 「こーわっ」と、あわててランドセルを背負せおって教室きょうしつりくくん。いつもならミサはいかけるところなのに、今日きょうはうつむいたままだ。

 「音楽室おんがくしつこうよ」

 わたしはミサにこえをかけた。

 だれもいない音楽室おんがくしつには、夕方ゆうがたひかりんでいた。ミサはランドセルをゆかほうると、窓際まどぎわって頬杖ほおづえをつく。

 なんとこえをかけたらいいだろう。ずっとうしろにっていても仕方しかたないので、ピアノのまえすわった。

 なかば、やけくそ。おもかぶままにうたはじめた。

 「りくとずっと、いっしょにいたかぁった~」

 ミサは、ビクッとしてかおげた。

 「きょうったの、りくがあのきだってこと~。わたしじゃぁなかったの、ちがったのぉ~、りくのバカ~、なし~」

 徐々じょじょにピアノとうたはずみをつけていった。

 「きでいてくれるとおもってたのに~、けっこんしたかったのに~、りくのバカ~なし~」

 ミサのから、なみだがツーッとちるのがわかった。

 えると、ミサはった。

 「はなえ、天才てんさい

 「へへっ、おはずかしい」

 「ありがとう」

 「ううん」

 ちょっとほっぺたがあつい。わたしたちはそれ以上いじょうなにはなさず、一緒いっしょかえった。

  + + + + 

 このことをおもしたのは、「四月しがつすこしつめたくて」をんだからです。

 このほんてくるのは、けなくなっている詩人しじん、その担当たんとう編集者へんしゅうしゃ、そして詩人しじん教室きょうしつかよう、大学だいがく受験生じゅけんせいむすめをもつおかあさん。みんな、こころふかきずかかえています。

 直接ちょくせつはなそうとすると、意固地いこじになったり、からまわりしてしまったりしますが、うと、おもいをせたり、しずかに問題もんだいえたりしていきます。詩人しじんは、自分じぶんにとっては「こころうちがわりていくための階段かいだん」だといます。

 かなしいときおこっているとき音楽おんがく小説しょうせつなどのちからりるのが、わたしもきです。あんまり演出えんしゅつしすぎると、ずかしいけれど。

 あたらしい出会であいや変化へんかおおい4がつときには、自分じぶんきな言葉ことば音楽おんがく自分じぶん気持きもちをせてみると、かたちからけるかもしれませんね。


四月しがつすこしつめたくて』

谷川直子たにがわなおこちょ

河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ 1512えん


 エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

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