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程永華・中国大使の離任 彼を知り己を知る重要さ

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 在任期間が歴代最長の9年余に及んだ中国の程永華大使が離任する。昨秋の安倍晋三首相の訪中に続き、6月には習近平国家主席が訪日する見通しで、中国は大使交代の環境が整ったと判断したようだ。

 中国は1972年の国交正常化以降、日本の情勢に詳しい知日派外交官を育て重用してきた。利害が複雑に絡む日中関係の将来を考えれば、日本も中国の実情をしっかりとつかめる知中派を増やす必要がある。

 激動の日中関係を体現する9年だった。着任した2010年は中国の国内総生産(GDP)が日本を抜いて経済的な力関係が逆転し、尖閣諸島周辺で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突する事件も起きた。

 12年には日本の尖閣「国有化」に反発し、中国で大規模な反日デモが繰り広げられた。その後も中国の軍事拡張、海洋進出の動きに日本の対中警戒感が高まった。中国も関係改善の必要を感じ、日本各界とのパイプを持つ程氏の任期を延ばしたとみられている。

 程氏は小学生の頃から日本語を学び、日中国交正常化後に初の国費留学生として来日した。外交官としての日本滞在も通算20年以上だ。大使の影響力は限られるが、日中関係が最悪といわれた時期に中国きっての知日派大使がいたことは不幸中の幸いだったのではないか。

 程氏は安倍首相が主催する日本語を話す大使との昼食会の常連メンバーだった。首相は離任を前に先週、異例の形で程氏を昼食に招いた。対日関係が悪化した韓国では知日派外交官の登用で中国に後れを取ったと自戒する論調も出ている。

 中国は米中貿易紛争の激化から日本や欧州との関係を重視している。

 李克強首相は訪中した河野太郎外相との会談で日中関係が正常化の軌道に乗ったことを確認した。新大使となる孔鉉佑(こうげんゆう)外務次官も10年以上日本で勤務した知日派で朝鮮半島情勢にも精通している。次官経験者の大使起用は日本重視の表れでもある。

 「彼を知り己を知れば百戦あやうからず」。孫子の教えは外交にも通じる。中国が知日派を連綿と育成してきたのもそのためだろう。

 日本にとり中国との関係は経済、安保両面で死活的に重要だ。相手を知ることで負けてはいられない。

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