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池内紀・評 『飛族』=村田喜代子・著

 ◆『飛族(ひぞく)』

 (文藝春秋・2160円)

語り部が紡ぐ空と海と人の物語

 村田喜代子は現代の語り部である。一九七七年のデビュー以来四十二年、少しも筆力は衰えない。それどころか、一作ごとに広がりと深みを増していく。東京の空騒ぎとはほど遠いところ、北九州の一角に住みつづけ、じっと想をこらしている。

 このたびでは島の婆(ばあ)さん二人をめぐっている。といえばすぐに、二十年あまり前の卓抜な短篇「望潮」を思い出すだろう。「つ」の字に腰が曲がり、歩行器がわりに「手製の箱車」を押し歩く婆さんたち。海辺の道を車がすっとばす。そこへヨチヨチやってくる。いうところの「当たり屋」であって、車にひかれて死ねば、まとまった金を子や孫にのこしてやれる。そんなわけで、毎朝、「つ」の字の形の婆さんたちが、平ベたいカニのように家から出てきて、めいめい箱車を押しながら自分の持ち場へ散っていく。

 目を輝かせて読んだ。そしてこういう作家を同時代にもつことのしあわせを思った。

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