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今週の本棚

佐藤優・評 『崩壊の森』=本城雅人・著

 (文藝春秋・1890円)

ソ連末期の政治動向と人間ドラマ

 ソ連共産党は、西側諸国の政党とはまったく異なる組織だった。一党独裁体制の下、共産党が政府や議会、マスコミなどを指導していた。共産党は国家そのものだったのである。ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長は、ソ連国家を強化するために共産党独裁体制を打破し、複数政党制を導入する計画を極秘裏に進めていた。1990年2月5~7日に行われたソ連共産党拡大中央委員会で、共産党独裁放棄が決定されたが、それを世界で最も早く、同年2月3日にスクープしたのが産経新聞モスクワ支局長の齋藤勉氏だった。このスクープによって産経新聞は1990年度の日本新聞協会賞を受賞した。齋藤氏をモデルにしたと思われる東洋新聞の土井垣侑(たすく)モスクワ支局長の目からソ連末期の政治動向と人間ドラマを描いた傑作だ。ちなみに評者をモデルとしたと思われる日本大使館三等書記官も登場する。当時、評者は深夜に齋藤氏と路上で歩きながら情報交換をしたことが何度もある。新聞記者には負けたくないと思いながら仕事をしたあの頃の記憶が鮮明に甦(よみがえ)ってきた。

 土井垣は、モスクワに赴任したとき前任者の新堀(しんぼり)から特ダネ禁止を言い渡される。特ダネを取ろうとしてKGB(ソ連国家保安委員会=秘密警察)に目を付けられ、国外追放にされると、東洋新聞が大打撃を受けるからだ。しかし、土井垣は、ゴルバチョフが進めるペレストロイカ(改革)の深層を知ろうと、権力の中枢に食い込んでいく。そして、ついに共産党独裁放棄の戦略を立案した1人に行き当たる。情報入手の場面がリ…

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