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SUNDAY LIBRARY

本郷 和人・評『桜狂の譜』今橋理子・著

儚く咲く美しさに取り憑かれた絵師たち

◆『桜狂の譜 江戸の桜画世界』今橋理子・著(青幻舎/税別3000円)

 高校の古文で習った。平安時代以来、「山」といえば比叡山延暦寺、「寺」は三井寺(みいでら)。同様に「花」というのは桜のことで、日本人は古来、桜をこよなく愛してきたのだと。

 ぼくは最近、この常識に疑問を抱いている。というのは町の名前。近世、各地の大名は新しい城下町を形成し、それが現在の県庁所在地や県内有力都市へと繋(つな)がる。大名は開発した町に名を付けるが、このときに松山・高松・松江・浜松・松本・松代・松阪・若松など、「松」の字が多く用いられるのに対し、「桜」は使われていないのだ。

 徳川家康の旧姓である「松平」の一字を、という意図もあるだろうが、お城の屏風(びょうぶ)に好んで描か…

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