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廃炉作業に外国人 適切な環境整備が先決だ

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 東京電力が、新たな在留資格「特定技能」の外国人労働者を、福島第1原発の廃炉作業などに受け入れる方向で準備を進めている。

 福島第1原発構内では現在、東電や協力会社の社員らが1日平均で計約4000人働いている。

 法令に基づく作業員の被ばく線量は、年間50ミリシーベルトかつ5年間で計100ミリシーベルトが上限だ。これを超えて働くことはできず、作業員の確保には、人海戦術的な側面がある。

 廃炉が終わるまで30~40年かかるとされる。長期的な人材の確保は、その成否を左右する重要な課題だ。

 だが、法務省は廃炉作業への外国人技能実習生受け入れを認めてこなかった。特殊な作業で、「習得した技術を母国で役立てる」という制度の趣旨にそぐわなかったからだ。

 今回、東電が受け入れを想定するのは主に特定技能1号の外国人だ。技能実習生として3年間の経験があれば、無試験で資格を得られる。

 ただ、廃炉の現場は放射線被ばくの恐れがあり、専門用語も飛び交う厳しい環境にある。制度の見直しが、外国人労働力を確保する安易な方便となってはいけない。

 特に心配なのが日本語の問題だ。1号に必要な日本語能力は「日常会話レベル」だが、廃炉作業では、放射線関連用語を理解するなど、より高い語学力が欠かせない。

 本人が内容を理解できないまま、被ばくが伴う作業に従事させられるようなことが起きないだろうか。

 特定技能の外国人雇用について東電は「協力会社の判断だ」という。作業員の大半は何段階にも分かれた下請け企業に雇われている。東電には、発注元として末端まで管理の目を行き届かせる責任がある。

 外国人労働者に海外での被ばく経験がある場合、国内での被ばく量と合わせて管理する必要がある。ところが、海外での被ばく量は労働者の自主申告に委ねられている。的確な管理ができるか疑問が残る。

 労働者が帰国後に、被ばくが原因とみられる病気を発症した場合、労災申請を円滑に進めることができるのか。そんな心配も浮かぶ。

 廃炉作業へ外国人を受け入れるのなら、日本語能力の向上対策や被ばく管理体制の強化など、適切な受け入れ環境の整備が先決だ。

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