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東南アジア探訪記

フェイクニュースが乱れ飛んだインドネシア大統領選と総選挙 逮捕者も

フェイクニュースが拡散されていないかSNSを監視するマフィンドのメンバー=ジャカルタで2019年3月6日、武内彩撮影

 大統領選挙と総選挙が17日に実施されたインドネシアで、選挙期間中に候補者を陥れるようなフェイク(偽)ニュースがソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)をにぎわし、逮捕者を出す事態に発展した。国民の感情を揺さぶりやすい宗教を利用した悪質なフェイクニュースも拡散する。NGOなどが目を光らせているが、対応は追いついていない。

 「ジョコ大統領が再選したら、アザーン(イスラム教の礼拝所が礼拝時間を知らせる放送)が禁止される」

 再選を目指して出馬したジョコ氏に関するフェイクニュースがSNSで出回った。ライバル候補の元陸軍幹部、プラボウォ氏の支持者という女性らが戸別訪問でイスラム教徒の危機感をあおる発言をする映像が瞬く間に拡散した。ジョコ氏は家族とメッカへの巡礼も行うイスラム教徒だが、選挙戦では「反イスラム」のレッテルに悩まされた。

 プラボウォ陣営の選対幹部だった女優で反政府活動家の女は、顔を負傷した写真付きで「男たちに暴行された」とするメッセージを通信アプリ「ワッツアップ」で拡散し、選挙に絡んだ襲撃だと周囲に思わせた。しかしその後、傷は美容整形手術によるものと判明し、偽情報を拡散させた容疑で逮捕、起訴された。

 プラボウォ選対の情報担当、ラディトヤ・プラタマ氏は、選挙戦でのフェイクニュースはインドネシアだけの問題ではないとしたうえで「SNSは、テレビでは伝えきれない候補者の素の姿を見せ、市民からの要望を直接聞くこともできる。選挙には欠かせない」と話した。

 広大な国家で有権者1億9200万人を対象に行われる選挙では、SNSは候補者を売り込む有効な手段だ。国内のスマートフォンの普及率は50~60%といわれ、多くの人がソーシャルメディアを利用する。一方で警察は選挙期間中にフェイクニュースが普段よりも増えると警告していた。

 

 ▽監視の目を光らせるNGO

匿名で届いたジョコ政権を称賛する雑誌を手にする男性教師=ジャカルタ近郊で2019年3月8日、武内彩撮影

 ジャカルタを拠点に活動するNGO「マフィンド」は、ツイッターやフェイスブックなどに投稿されるフェイクニュースを監視する。広報担当のアリボウォ・サスミト氏は「フェイクニュースは、SNSの投稿を読んだ人が真偽を確かめないまま友達同士のグループなどに流して瞬く間に拡散する。転送するだけなら責任はないと軽く考えているのだろう」と指摘する。

 マフィンドは常駐職員がSNSで流れるニュースを監視し、偽情報と確認すれば訂正した内容をただちに投稿し直す。政府発表などを元に確認する作業には時間がかかり、選挙期間中は追いつかないほどだったという。サスミト氏は「今はスマートフォンというとてつもないツールを手に入れたものの、使いこなすための知識がないという状態だ。フェイクニュースへの対抗策は時間がかかるけれど啓発と教育しかない」と何度も口にしていた。

 一方、選挙戦ではアナログな手段も健在だった。2014年の前回選では、フェイクニュースを盛り込んでライバル候補の足を引っ張る怪文書が問題化したが、今回はプラボウォ氏を支援するイスラム保守勢力を批判する記事の載ったタブロイド紙がモスクなどに届いた。

 ジャカルタ近郊にあるイスラム教の寄宿学校には2月、差出人不明の封筒でジョコ氏の笑顔が表紙の雑誌が送りつけられた。全100ページあまりの全編がジョコ政権の功績を過剰なほどにたたえる内容だ。届いた雑誌は、新聞やテレビなど他のメディアも伝えたニュースをまとめたもので、フェイクニュースは含まれていなかった。ただ、同校では雑誌を生徒の目に触れさせないことに決めた。17歳以上の150人ほどの生徒に投票権があるためだ。

 男性教師は「生徒には普段からフェイクニュースに惑わされないよう指導している。雑誌の内容はフェイクではないかもしれないが、匿名で送り付けることが正しいとは思えない」と憤った。【武内彩】

武内彩

ジャカルタ支局記者。1980年和歌山県生まれ。2005年に毎日新聞に入社、神戸支局を振り出しに大阪社会部の在籍が長かった。東南アジア好きは学生時代のフィリピン留学以来。担当地域はインドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポール、オーストラリアなど。

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