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研究者としての天皇陛下 論文33本 ハゼの分類法提案、新種発見も

天皇陛下、研究者としての歩み

 30日に退位される天皇陛下は、緻密な論文で国内外から高い評価を受けている科学者でもある。特にハゼの研究で知られ、「アキヒト属」と名付けられた属があるほどだ。共同研究者らは「公務で多忙でも、メリハリをつけて研究を続けてきた」と、その誠実な研究姿勢を振り返った。

自分の目で見て納得 

 「研究のともしびは決して消したくはありません」――。英国王立協会で1998年、科学者としての功績をたたえられて「チャールズ2世メダル」を授与された際のおことばに、陛下の研究への思いが凝縮されている。

 陛下が著者や共著者となった論文は、皇太子時代を含め33本あり、うち9本が即位後の発表だ。元側近は「(研究に関する)ちょっとした議論でも廊下での立ち話はせず、必ず後に時間を作って(御所内の)研究室に入り、資料を基に議論した」と証言する。

 研究では「とにかく標本や実験データを自分の目で見るまで納得しなかった」といい、海外の研究者に依頼し、標本を取り寄せたこともあった。陛下は「文献は読んでも読まれるな(文献に流されるな)」を信条としていたという。

 議論を大切にしていた陛下は、日本魚類学会に正会員として参加。若い頃には若手研究者による私的な討論会にも積極的に足を運んだ。討論会の現在の会員である渋川浩一・ふじのくに地球環境史ミュージアム研究員は「当時の陛下は参加者と車座になり、鋭い質問をしていたと聞いている」と話す。

 幼少期からさまざまな生物に興味を持ち、皇居に息づく動植物を大切にしており、そこから始まったのが皇居にすむタヌキの調査だった。陛下は2009年1月~13年12月の約5年間、自ら一定の場所でタヌキのふんを集め、分析したところ、多様な木の実が混ざっていたことが判明した。

 16年発表の論文を共にまとめた国立科学博物館動物研究部の川田伸一郎研究員は「皇居の自然の豊かさを象徴している論文で、地道な研究姿勢を学んだ」と話す。

ハゼの研究で一分野切り開く

 陛下がハゼの分類学の研究を始めたのは皇太子時代だ。生物学者によるご進講の際に「生物の骨格は多様」と紹介を受け、さまざまな生物の骨格を調べる中でハゼに出合ったという。

 初めてまとめた論文は「ハゼ科魚類の肩胛骨(けんこうこつ)について」(1963年)。染色液で67種類のハゼの体を染め、胸ビレをささえる肩甲骨の形状から三つのグループに分けられると論じた内容だった。

 2100種類以上いるハゼは川の上流や干潟から深海までさまざまな環境に適応し、「多様性の権化」とも称される。

 そのハゼについて「一分野を切り開いた」と評される陛下の業績が、顔に並ぶ水流などを感じる感覚器「頭部孔器」の配列に着目した分類方法だった。縦横に並ぶこの頭部孔器の位置や数が、分類に使えることを発見した。

 このほか八つの新種を発表し、和名のなかったハゼに皇后さまのアイデアをもとに「アケボノハゼ」と名付けたこともある。

 今月には、ハゼの交雑に関する新たな論文が日本魚類学会の魚類学雑誌に掲載された。元側近は「退位後も研究を生涯続けていただきたい」と話している。【荒木涼子】

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