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介護施設の高齢者が“仕事” 費用負担軽減や生きがいに 奈良で試験導入 

入浴用ハーブ作りに挑戦する介護施設の入居者ら=奈良市宝来4のリールデイサービス宝来で2019年4月17日、数野智史撮影

 介護施設に入居している高齢者に裁縫や製品加工といった“仕事”をしてもらうユニークな取り組みが、奈良県内の事業所で試験的に始まった。介護費用負担の軽減や生きがいの創出が狙いで、事業者は「高齢者の新しい生き方に」と意気込む。【数野智史】

     「できるんでしょうかねぇ」。奈良市宝来4のサービス付き高齢者住宅「リールデイサービス宝来」で17日、入居者に軽作業を試してもらう実験があった。参加した女性(81)は作業台の前に腰を下ろしてつぶやいた。この日用意されたのは、吉野産ヒノキのおがくずを巾着状の袋に詰めて入浴用ハーブを作る作業。81~90歳の女性3人が、ハーブを製造販売する「チアフル」(奈良市)の松本梓社長(33)に教わりながら挑戦した。

     開始前に不安を口にしていた女性は、10センチほどのたこ糸を指先で器用にねじりながら、おがくずの入った袋を手早く縛って見せた。子育てをしていた頃は子供のセーターを編んだり、着物を縫ったりしていたため、軽い認知症を抱えた今も糸の扱いはお手の物。「こんなものかしら」と完成品を手に笑顔を見せる女性らを見て、松本社長も「初めてなのに、製品としての完成度は合格の域。頼もしい」と目を見張った。

     この取り組みでは、施設運営会社「リールステージ」(奈良市)の関連企業「あをに工房」が外部から作業を受託し、希望する入居者に割り当てる。パッチワークや水耕栽培などさまざまな軽作業を受託する方針で、最終的にはAI(人工知能)などを活用し、各入居者に最適な作業を提案していく構想もある。

     厚生労働省によると、介護付き有料老人ホームを含む「特定施設入居者生活介護(短期利用以外)」の平均費用(昨年4月現在)は月額約22万円。年金受給者のうち年金収入が250万円を超える人の割合は、男性が約3割、女性は1割に満たない状況で、本人や家族が経済的負担に悩まされるケースは少なくない。社会保障費が膨らみ続ける中で、介護事業者の収益も年々厳しくなっている。

     県内外で介護施設を運営するリールステージ専務の中山久雄さん(41)は、環境や条件さえ整えれば働ける高齢者がいることに着目。「『自立した生活を送れない高齢者』とひとくくりにするのではなく、向き不向きを見極めて仕事を用意できれば、入居者側は介護費用の負担を減らしながら生き生きと過ごせるし、事業者側も介護保険以外の収入源を確保できる」と指摘する。

     生産量や品質の管理、体力と精神両面での持続性など本格的な始動に向けた課題は残っているが、中山さんは「福祉業界に変革をもたらせるかもしれない。全国に活動を広げたい」と意欲を見せる。

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