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社説

平成を送る 日本経済の低迷 成長の芽を探し続けよう

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 株価が史上最高値の3万8900円台に高騰し市場が沸きに沸いたのは、平成が始まった1989年の年末だった。直後にバブルは崩壊し、日本経済は長期低迷に陥った。

     代表的なのは、山一証券の破綻に象徴される金融危機だ。巨額の公的資金という高い代償を払って何とか乗り切った。もう一つは、戦後の経済成長をけん引した電機産業をはじめとする日本企業の失速である。平成が幕を閉じる今も苦闘が続く。

     冷戦終結に伴う経済のグローバル化にも揺さぶられた。中国などの新興国が台頭して、低価格の製品を大量輸出するようになり、日本企業は激しい国際競争にさらされた。

     さらに米国発のインターネットが経済や社会を大きく変えた。デジタル化という変革期への対応を巡り、日本企業は後手に回った。

    「巨大隕石」ITの衝撃

     「ネットは巨大な隕石(いんせき)だった。急にデジタルに対応しようとしても、旧来のものづくりから抜けきれなかった」。ソニーの社長と会長を95年から10年間務めた出井(いでい)伸之氏(81)はこう振り返る。

     米国の壮大な構想に衝撃を受けたのは、93年にゴア副大統領(当時)のスピーチを聞いた時だ。全米の企業や家庭のコンピューターを高速通信網で結び、情報技術(IT)を一大産業に育て上げる内容だった。

     デジタル化は新興国にも有利に働いた。高度な技術がなくても一定の品質の製品を作れるようになった。

     出井氏の心配は的中し、日本の電機産業は総崩れとなった。米アップルの「iPhone(アイフォーン)」に席巻され、スマートフォンでは圧倒的な差をつけられた。中国や韓国勢にもシェアを奪われた。

     世界は今、人工知能(AI)が社会のありようを変える第4次産業革命の時代を迎えている。AIでネット社会を支配するのは米国の巨大IT企業であり、日本はここでも出遅れた。財界の論客で経済同友会の代表幹事を務めた小林喜光氏(72)は「平成は敗北の時代」と総括する。

     国の介入も事態を迷走させた。

     電機各社のスマホ向け事業を束ねた「ジャパンディスプレイ」の創設を主導し、官民ファンドで救済を試みた。だが低迷を抜け出せず、結局は再建のかじ取りを断念し中国と台湾の企業に譲り渡してしまった。

     再生にはどうすればいいのか。示唆に富む例を取り上げたい。

     神奈川県茅ケ崎市にある金属加工会社の由紀(ゆき)精密は社員40人ほどの町工場だ。平成に入って倒産寸前に追い込まれた時期があったが、今や国際宇宙ステーションの装置などの最先端分野で、なくてはならない存在に生まれ変わった。

     もともとは公衆電話の部品をこつこつ作る下請けだった。だがバブル崩壊と携帯電話の普及という平成の荒波にもまれ、受注が急減した。

    潜在的な技術力生かす

     父から工場を継いだ大坪正人社長(43)が活路を探ったのは宇宙や航空の分野だ。全くの畑違いだが、公衆電話の時代から定評のあった精密な仕上がりを生かそうと挑んだ。

     技術の結晶として開発したのは直径1センチのステンレス製コマだ。回転させても完全に静止しているように見える状態が3分以上も続く。1000分の1ミリ単位で精度を高め、極限まで完全な円に近づけた成果だ。

     パリで開かれた国際見本市で披露すると、驚きの声が上がり、20カ国以上の企業が名刺交換を求めてきた。さっそく欧州の人工衛星企業から注文が入った。大坪社長は「規模が小さくても技術とアイデアがあれば世界に通用する。潜在的な力を持つ日本企業は多いはず」と語る。

     日本にはものづくりで培った技術がある。高品質の製品は多く、海外でも依然評価が高い。第4次産業革命を日本の成長に結びつけるには、そうした強みを生かすべきだろう。

     次世代車と期待される自動運転車の開発は、AIによるデータ分析に基づいて、車の動きをきめ細かく制御する仕組みを作れるかがポイントだ。技術で世界をリードした日本の自動車産業に勝機はあるはずだ。

     また日本では小さな新興企業がAIを生かしたロボットの開発に取り組むケースも出てきている。人口減少社会を支える役割が見込めるものだ。巨額の資金を蓄えている大企業は、組織の枠を超えて次世代技術や人材育成に積極投資してほしい。

     令和の時代もしばらくは手探りかもしれない。大事なのは成長の芽を粘り強く探し続けることだ。

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