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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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江戸末期、黒船で来航した米国のペリー提督ら一行は…

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 江戸末期、黒船で来航した米国のペリー提督ら一行は、横浜で相撲見物をしている。日米和親条約が締結された1854(嘉永7)年、幕府のはからいで力士と面会した▲米俵を軽々とかつぎあげる力士に米兵は興味を抱き、親善試合が即興で行われた。当時無敵の大関・小柳が一度に米兵3人を相手にして圧勝し、「アメリカ人一同喝采して感嘆し、力士たちの親善の使命は見事にはたされた」と「横浜市史」は記す▲時が移り第二次大戦の敗戦後は進駐軍のために慰問相撲が催され、場所中は招待席が用意された。投げ技を増やして面白く見せようと、1場所限りで土俵が広げられたこともある▲そんな歴史もある相撲だが、トランプ米大統領が来月に来日する際、大相撲夏場所を観戦することで調整が進んでいる。安倍晋三首相との会談では「優勝力士にトロフィーを授与する」と意気込みを語った。新天皇の即位後、初の国賓として招待する厚遇の一環でもあろう▲米国と角界のつながりは他にもある。外国人力士の草分け、高見山はハワイ州の出身だった。かつては米航空会社の支配人が表彰式で「ヒョーショージョー」と賞状を読み上げ人気を博し、日米親善に一役買った。大統領が来れば新たな一ページとなろう▲もっとも、先行き不透明な貿易交渉など、首相と大統領の蜜月関係も予断を許さぬ中での来日である。ペリーの砲艦外交への幕府の苦慮や、土俵まで広げた戦後の苦労を思うと、観戦に抱く思いもいささか複雑になる。

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