メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

余録

「民草に露の情けをかけよかし代々の守りの国の司は」…

[PR]

 「民草(たみくさ)に露の情けをかけよかし代々の守りの国の司(つかさ)は」。これは江戸時代後期の光格(こうかく)天皇が将軍家斉(いえなり)に贈った和歌という。幕政の慣例を破り、朝廷が権力を握る幕府に仁政を求めた歌として世間に広まった▲天明の飢饉(ききん)で「御所千度参り」と呼ばれた民衆の群集行動があった折、幕府に窮民救済を求めて救い米を放出させた光格天皇である。今に続く朝廷の儀礼を定めて死後久々に天皇号をおくられ、幕末の朝廷の権威を高めた天皇だった▲きょうの天皇陛下の退位は、202年前の光格天皇の譲位以来となる。陛下は光格天皇の事績を強い関心をもって調べられたという。民主主義の時代におけるその象徴天皇像も、天皇としての歴史意識の中で彫(ちょう)琢(たく)されたのに違いない▲「幼子の静かに持ち来(こ)し折り紙のゆりの花手に避難所を出づ」。これは熊本地震の被災地を訪ねた折の陛下のお歌である。「ためらひつつさあれども行く傍(かたは)らに立たむと君のひたに思(おぼ)せば」。その陛下の思いを、皇后陛下はそう詠んだ▲威厳ではなく幼子の折り紙を大切にする心。被災者の迷惑を気遣いつつもその傍らに身を運ぼうとする思い。苦しむ人、忘れられた人に寄り添う姿への共感は人々の心にひそむ壁をも取り払った。陛下が創り上げた象徴天皇像である▲そんな営みに費やした「全身全霊」との陛下の言葉に主権者の国民が共感してのきょうの退位である。伝統と民主主義をつなぐ「共感」の天皇制をどう未来に引き継ぐか。思いをめぐらしたい平成最後の日だ。

    おすすめ記事
    広告
    毎日新聞のアカウント
    ピックアップ
    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 嵐のコンサート「開場前見たかった」ヤフオクドームに侵入容疑で男逮捕

    2. 2位の羽生「めちゃ悔しい 今に見ておけ」 GPファイナル男子

    3. 羽生2位、5度目のV逃す チェンが世界最高で3連覇 GPファイナル男子

    4. 三菱電機社員が自殺、上司を自殺教唆容疑で書類送検 兵庫・三田

    5. 羽生、プレゼントは「燃える悔しさ」 25歳誕生日、チェンと高次元の戦い

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    今週のおすすめ
    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです