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号外大崎事件、再審認めず 最高裁が初の取り消し
社説

天皇陛下きょう退位 国民と共にあった長い旅

 天皇陛下がきょう退位される。

     2016年8月、退位の意向をにじませる「おことば」を表明し、社会に驚きが広がってから2年8カ月。光格天皇以来、約200年ぶりの退位が実現する。

     現行憲法のもと、象徴天皇として初めて即位し、あるべき姿を全身全霊で模索した平成の30年だった。

     陛下は全国を訪れ、地域を支える市井の人々との接点を大事にしてきた。「おことば」の中で、こうした国民に対する深い「信頼と敬愛」をもって、天皇としての務めを果たせたと述べた。

     「信頼と敬愛」は、父の昭和天皇が戦後間もない1946年のいわゆる「人間宣言」の中で、天皇と国民との関係について用いた文言でもある。陛下は同じ言葉の中に、ご自分と国民との新しい関係を築こうという思いを込めたのだろう。

    象徴であり続けるため

     そもそも「象徴」に明確な定義はない。象徴像をどう築くのかは皇太子のころから問われていた。皇太子妃として初めてとなる民間出身の皇后美智子さまと結婚し、お二人で国民の中に積極的に入っていった。目指したのは、国民との絆を深めることだった。

     陛下は天皇の務めについて、国民の安寧と幸せを祈ることと共に「時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うこと」と述べている。その言葉通り、被災地をはじめ、全都道府県を2回以上訪れた。中でも移動が簡単ではない離島への訪問は、皇太子時代を含めて21都道県の55島に上る。

     発展から取り残された地域に足を運ぶことで、日本という共同体の内にあることを示し続けた。障害者施設やハンセン病療養所を繰り返し訪問したこととも重なる。

     高齢となるに伴い、象徴の役割がいずれ十分に果たせなくなるとした陛下のおことばについて、天皇は存在さえすればよく、公務を代わりに担う摂政を置くべきだとの意見も出た。しかし、お気持ちは国民の共感を呼び、退位の特例法ができた。「行動する天皇」として、象徴の務めを全力で果たしてきた姿に国民が敬意を抱いていたからだろう。

     陛下のおことばがビデオメッセージとして流れるまで、象徴とは何かについて国民的な議論はなく、陛下に委ね過ぎていた。おことばは、国民が「象徴」と向き合うきっかけになった。

     過去の慣習にとらわれない発想は「平成流」といわれた。お二人が亡くなったあとのことまで考え、葬儀を簡素化するために、従来の土葬ではなく火葬とし、陵の規模縮小も決めた。外出時は、市民生活に大きな影響が出ないよう警備を減らすよう求めた。

     陛下は戦争による昭和の「負の遺産」とも向き合った。かつて「私は戦争の無い時を知らないで育ちました」と述べたように、3歳の時に日中戦争が始まる。少年期に昭和天皇の苦衷に触れ、戦後は欧米歴訪などを経験して「平和」と「親善」への思いを強くしたといわれる。

    戦争の記憶風化を懸念

     戦後50年を迎えた95年8月の全国戦没者追悼式で「ここに歴史を顧み、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い」との表現を初めて使い、戦後70年の時は「さきの大戦に対する深い反省と共に」という部分を加えた。戦争体験者が年々減る中で、節目の年におことばの表現を変えながら、記憶の風化を心配するお気持ちを国民に伝えた。

     唯一の地上戦を経験した沖縄への思いはとりわけ深い。皇太子時代に初めて訪問した75年7月、火炎瓶を投げつけられる事件が起きた際に「払われた多くの尊い犠牲は、一時の行為や言葉によってあがなえるものではなく……」との談話を出した。沖縄の痛みに息長く寄り添う姿勢は、その後も変わらなかった。

     「慰霊の旅」は国内にとどまらず、サイパン、パラオ、フィリピンなど激戦地にも及んだ。敵味方の区別なく深くこうべを垂れる姿が国内外に強い印象を与えた。

     皇室の伝統を踏まえつつ、時代に合った皇室像を美智子さまと作り上げ、多くの国民に受け入れられた陛下の長い「旅」が終わる。平成から令和となり、皇室のあり方も時代の流れと共に変わっていくだろう。

     そうだとしても、平成の30年余に陛下が常に国民と共にあろうとした姿は、時代を超えて国民の心に深く刻まれるに違いない。

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