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社説

令和時代に入る日本 変化にしなやかな適応を

 緑さす季節、皇太子さまが新天皇に即位され、令和が幕を開ける。

     新元号の事前公表で国内はひとしきり令和ブームに沸き立った。改元が天皇の逝去と一体だった近代の日本では見られなかった現象だ。

     漢字二文字になにがしかの希望を託すのは元号文化の特質である。昭和でも平成でも、それがあった。

     ただ、今回がより祝祭的なのは、崩御の重苦しさから解放されたことのみならず、人びとの間で心機一転のリセット願望が強いからだろう。

     30年と4カ月足らずの平成期は、それほど日本にとってめまぐるしく、試練の時代であった。

     平成の初期に世界経済の15%を占めていた日本の国内総生産(GDP)は今や6%程度にとどまる。かつて「冷戦の最大の勝者は日本」と言われたころの面影はない。

    途切れない歴史の流れ

     国際秩序は冷戦の終結とともに一変した。過激主義のテロがおびただしい数の人命を奪う。中国の強大化と北朝鮮の軍事的挑発が地域情勢を不安定にする。平成は安全保障政策のあるべき姿をめぐって、日本がもがき続けた時代でもある。

     さらに二つの大震災を頂点に幾多の自然災害に見舞われたことが、悔やみきれない記憶として残る。

     だからこそのリセット願望なのだろう。しかし、当然にも歴史の流れは平成から令和へと連続し、決して途切れることはない。

     むしろ新たな時代に私たちに求められるのは、今後も押し寄せる巨大な変化に適応するための、しなやかさと辛抱強さではないだろうか。

     振り返れば、明治政府は中央集権国家を築くため、士農工商の身分制を廃して「国民」を作り出した。天皇制はその機軸だった。

     しかし、当時の立憲君主制は議会の力があまりに弱く、やがて軍部の暴走を招いて国を破綻させた。

     戦後の憲法で天皇は象徴に変わるが、昭和天皇にはなお「元首」の名残があった。その意味で立憲主義と象徴天皇制が名実ともに強く結びついたのが平成期だと総括できる。

     急速なグローバル化の反作用として世界各国で社会の分断が懸念されている。日本が相対的に安定を保っているのは、象徴天皇制による絆があるからだとも言われる。

     国家はその領域にいる人びとの共同体だ。皇室への敬愛は、成員がまとまる力になるのは確かだろう。

     ただし、これからの日本は国内で暮らす人が必ずしも国民とは限らない時代に入っていく。

     日本の在留外国人はすでに人口の2%、273万人に上る。4月には外国人労働者受け入れ拡大の新制度が始まった。母語も習慣も違う隣人との共生がますます必要になる。

     外務省は外国政府向けに令和の趣旨を「beautiful harmony(麗しい調和)」と説明した。令を命令の意の「order」と訳する海外メディアがあったためだという。

     もし令和の精神が「調和」であるのなら、同質者の集合ではなく、でこぼこの個性を互いに認め合える多様性の尊重でなければならない。それがグローバル化する日本の姿を考える上でのしなやかさだろう。

    「国民の総意」の奥深さ

     昨秋他界した大沼保昭・東京大名誉教授は遺作「国際法」で「民族的少数者の社会統合を促進」するため国籍取得要件の拡充を訴えた。

     その論旨は、将来の多民族化が避けられない以上、海外の経験に学びながら、日本社会に最も適合的な法整備を進めよ、ということだ。

     そもそも政府が入国管理政策の転換に踏み切った背景には、日本の人口構造の急速な変容がある。

     30年後の日本の人口は2000万人減って1億人前後になると推定される。他方で2040年代には団塊ジュニア世代が65歳以上になり、高齢者人口がピークに達する。

     人口減少と高齢化は、社会保障費の不足や財政の悪化に直結する。辛抱強くその痛みと向き合うことなしに、日本社会の安定は望めない。これから生まれてくる令和世代への責任の果たし方でもある。

     天皇の地位は「国民の総意に基づく」という、憲法原理の奥深さを気付かせてくれたのが、3年前のあのビデオメッセージだった。

     私たちはこの原理を「初めからあるもの」としてながめてこなかっただろうか。天皇は国民統合の象徴ではあっても、主体ではない。国の姿を考え、社会の調和を図っていくのは、国民自身の課題である。

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