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社説

令和の憲法記念日に 国会の復権に取り組もう

 憲法は国の背骨と言われる。

     日本国憲法が施行から72年の時を刻み、姿を変えずに令和の時代へとたどり着いたのは、基本的によくできた憲法であるからだろう。

     ただし、憲法典そのものが修正なしの長寿を保っているからといって、現実の国家運営が健全だということにはならない。

     大事なのはむろん現実の姿だ。国民の代表が集う国会は、絶えず憲法について論じ、その価値体系に磨きをかける努力が求められる。

     安倍晋三首相が政権に復帰して6年半になる。歴代で最も改憲志向の強い首相は「改憲勢力」の拡張に執念を燃やし、選挙でそれなりに勝利してきた。それでも衆参両院の憲法審査会は停滞したままだ。

    無理を積み重ねた首相

     なぜだろうか。

     野党の硬直的な態度が一因であることは確かだろう。しかし、本質的な原因は物事の筋道を軽んじる首相の姿勢にあるのではないか。

     ちょうど2年前、安倍首相は改憲派集会向けのビデオで憲法9条への自衛隊明記案を打ち上げ、「東京五輪のある2020年に新憲法施行を」と期限まで付けた。

     いずれも自民党内での議論を積み上げたものではない。国会で真意をただした野党議員には「(インタビューを掲載した)読売新聞を熟読してもらいたい」と言い放った。

     昨秋、党総裁3選を果たすと、憲法に関わる国会や党の要職を側近で固め、与野党協調派を排除した。今年2月の党大会では、憲法が自衛隊を明記していないから自治体が自衛官募集に協力しないと、言い掛かりのようなことまで言っている。

     首相の軌跡をたどると、やはり幾つもの無理が積み重なっている。

     国内最強の実力組織である自衛隊を憲法上どう位置づけるべきか。その問題提起は間違っていない。

     ただ、日本の防衛政策は憲法9条と日米安全保障条約のセットで成り立っている。9条に自衛隊と書けば、自衛官は誇りを持てるといった情緒論に矮小(わいしょう)化すべきではない。

     ましてや9条改正で日本の抑止力が増すかのような右派の主張は、少子化対策と憲法に書けば人口減が止まると言っているようなものだ。

     だから9条の見直し議論は、日米安保体制や、不平等な日米地位協定の改定を含めてなされるべきだ。その作業を避ける限り、政権として「戦後レジームからの脱却」をうたいながら、沖縄には過酷な戦後レジームを押しつけるいびつさが続く。

     今、憲法をめぐって手当てが必要なのは、9条の問題よりもむしろ、国会の著しい機能低下だろう。その最たるものは首相権力に対する統制力の乏しさだ。

     議院内閣制にあって、国会はあらゆる政治権力の源泉である。国会の多数派が首相を選び、首相は内閣を組織して行政権を行使する。

     ところが、「安倍1強」が常態化してくるにつれ、内閣は生みの親に対してさほど敬意を払おうとしなくなった。親にあれこれと指図する場面さえも目立ってきた。

    貧弱なままの監視機能

     昨年の通常国会では森友学園をめぐって財務官僚による公文書改ざんが発覚した。行政府が国会を欺くという前代未聞の事態なのに、国会による真相究明はまったくの尻すぼみで終わった。首相が麻生太郎財務相を更迭することもなかった。

     国会の最も重要な役割は、社会一般のルールとして法律を制定することだ。多くの国民の利害にかかわるため、法案の妥当性は多方面から注意深く吟味されなければならない。それには正確な情報が要る。

     しかし昨秋、外国人労働者の受け入れ拡大に向けて政府が提出した入管法改正案は、新制度の具体的な内容をことごとく法務省令に委ねる立法府軽視の形式になっていた。

     憲法の基本思想は権力の分立による「抑制と均衡」だ。立法府が行政府に必要な統制力を働かせて初めて健全な憲法秩序が生まれる。

     平成期を通した一連の政治改革で首相権力が飛躍的に拡大したのに、国会の行政監視機能は貧弱なままに留め置かれた。ここに国政の構造的な問題があるのは明らかだろう。

     平成の目標が首相官邸機能の強化だったなら、令和の目標は国会の復権であるべきだ。国政調査権の発動要件に、西欧のような野党配慮を盛り込むだけでも国会は変わる。

     国会と政府の均衡を取り戻すことが、生産的な憲法対話の近道だ。

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