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赤いダイヤ

未来産業最前線 ドローンの街、飛躍(その2止)

宅配の荷物を抱え、サービスセンターから離陸する京東集団のドローン=中国江蘇省宿遷市で、赤間清広撮影

 

    飛行中のドローンの現在地点はコントロールルームのモニターにリアルタイムで表示される=中国江蘇省宿遷市で、赤間清広撮影

    ドローン物流改革本格化 過疎地も安価で配達 車で数十分、わずか5分で

    建物に囲まれた広場に到着するドローン。地面近くで荷物を切り離すと、再び飛び立った=中国江蘇省宿遷市で、赤間清広撮影

     中国でドローン産業が急成長した背景には、国内で商業利用が加速し、市場が一気に拡大していることがある。

    ドローンが届けた荷物を受け取り、自分のバイクに積み込む配達員=中国江蘇省宿遷市で、赤間清広撮影

     上海の北に位置する江蘇省。高速鉄道の駅から車に乗り換え、さらに2時間以上かかる農村地帯に、「ドローンサービスセンター」の看板を掲げた建物がある。外観は自動車販売店のようだが、展示されているのはさまざまな種類のドローン。中国インターネット通販大手、京東集団(JDドット・コム)が2017年に開設したドローン配送の拠点だ。

    配達員がバイクで地区内を回り、荷物を住民に届ける=中国江蘇省宿遷市で、赤間清広撮影

     広大な中国では山間部や農村に集落が点在し、トラックなど通常の配送方法では時間とコストがかかり過ぎる。「過疎地の配達先まで、どうすれば低コストで荷物を届けられるかが長年の課題だった」(同社)。解決策の一つがドローン配送というわけだ。

    中国・江蘇省

     センター脇の広場に行くと、同社が独自開発したドローン「Y-3」が待機していた。総重量10キロの荷物を積み、往復20キロの飛行が可能。この日の配達先は約3キロ離れた集落だ。車なら未舗装の道を数十分も走らなければならないが、ドローンならわずか5分で到着する。

    主なドローンメーカー

     センター2階にはコントロールルームが置かれ、画面に映る地図上に飛行中のドローンの位置がリアルタイムで表示される。飛行ルートはあらかじめプログラミングされており、担当者1人で運用できるという。

     到着地はどうなっているのか。車1台通るのがやっとという細い道を抜け、ようやくたどり着いたのは、古びた平屋の集落に四方を囲まれた広場のような場所だった。中央には畳1畳ほどの大きさの緑のシートが敷かれている。これが到着姿勢に入ったドローンの目標となる。

     しばらく待つと荷物を積んだ「Y-3」の飛行音が聞こえてきた。緑のシートの真上まで来ると、ゆっくり下降をはじめ、地上まで数センチのところで荷物を切り離す。

     到着地点では近くに住む于双虎さん(32)が待機する。于さんは京東と契約した配達員。于さんがスマートフォンで「荷物到着」の連絡をセンターに入れると、ドローンは再び自動で飛び立っていった。荷物は于さんが自分のバイクに乗せ、地区内をまわって注文通りに各家庭へ届ける。

     ドローン配達が始まるまで、この地区には宅配便が届かず、住民は車で1時間以上かけて最寄りの集積所まで荷物を取りにいかなければならなかった。ドローン配送で新しいスマホを受け取った江緒洋さん(52)は「今は毎日のようにネット通販を利用している」と声を弾ませた。

     京東は内陸の陝西省や四川省でもドローン配送を実用化しており、配達先の拡充も検討中だ。狙いは宅配コストの低減だけにとどまらない。京東は2月、日本の楽天とドローン配送分野で業務提携を結んだ。日本を含め規制が厳しい海外では、ドローンの運用に制限があり、実用化がなかなか進まない。中国でいち早く実績を積み上げる京東に、世界の宅配大手などが接触を始めており、京東は世界展開を視野に入れる。

     中国ではドローンによる物流改革が本格化し、農薬散布などの農業用ドローンも「爆発的成長期を迎えた」(国営新華社通信)。パイプラインなどインフラ設備の点検にもドローンが活躍しており、あらゆる分野に浸透が進む。

     国際会計事務所PwCが16年に発表した調査によると、ドローンを使ったサービスの世界市場規模は1270億ドル(約14兆円)以上。現在はさらに拡大しているとみられる。ドローンの製造だけでなく、サービス面でも中国が先行しつつある。

    民間主導で急成長

     中国ではドローンの操縦を学ぶ専門の学校が各地に誕生するなど、ドローンブームが過熱中だ。

     中国メディアは4月、中国政府が「ドローン操縦士」を代表的な職業の一つに追加したと報じた。他に追加されたのは、人工知能(AI)技術者、ビッグデータ技術者、工業ロボット操作員など。いずれもハイテク産業の核となる職業で、ドローンにかける当局の期待が分かる。

     中国では1960年代から、軍事部門でドローンの研究が進められてきた。しかし、技術が飛躍的に向上したのは、2006年創業のDJIなど深センの民間メーカーが台頭したこの10年のことだ。

     AEEの本社前には「ドローン通信指揮車」と書かれた警察車両がとまっていた。同社のドローンは16年に中国・杭州で開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議の警備にも利用されるなど中国全土の警察に配備され、欧州や南米などの警察機関へも納入されている。深セン勢の最新技術は治安維持や軍事分野にも広く応用され、海外の軍事関係者の「深セン詣で」も相次いでいる。

     しかし、政府や軍事部門との強いつながりは思わぬ逆風を呼び込みかねない。

     米メディアによると、米陸軍は17年、DJI製ドローンの使用を一時的に禁じた。米国は、次世代通信規格「5G」から中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の製品を排除するよう各国に働きかけるなど、中国政府と関わりが深い中国メーカーの排斥を加速させている。深セン勢の「独り勝ち」が続くドローンも標的となるリスクは消えない。

     ハイテク分野をめぐる米中の覇権争いが激化する中、民間主導で急成長してきた中国のドローン産業も無関係ではいられない。【深センで赤間清広】

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