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社説

政府が恩赦を検討 もはや理解は得られまい

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 天皇陛下の即位に伴う恩赦の実施を政府が検討している。

 恩赦は、行政権によって刑事裁判の内容や効力を消滅・軽減させるものだ。国家の慶弔事に実施されてきた。だが、三権分立の原則に照らしたとき、司法の判断を行政の権限で変えることは適切だろうか。

 恩赦は昭和天皇が亡くなった際など戦後11回実施され、直近では1993年の天皇陛下と皇后雅子さまのご結婚の時に行われた。

 政令で要件を定めて一律に実施する政令恩赦や、そこから漏れた人を内閣が基準を定めて個別に救済する特別基準恩赦などがある。

 最近では、公職選挙法や道路交通法、軽犯罪法の違反など比較的軽微な事件が対象になることが多い。

 過去の恩赦では、選挙違反に問われた政党関係者の公民権が政令恩赦で一律に回復することが批判されてきた。93年は、政令恩赦はなかったものの特別基準恩赦が実施され、結局、救済対象1277件の4分の3近くが選挙違反だった。

 恩赦の対象は内閣が決め、外からチェックする仕組みがない。選挙違反絡みの大量救済は、政治的な思惑の反映と見られても仕方ない。

 恩赦の歴史は古く、奈良時代にさかのぼるとされる。天皇を頂点とする朝廷支配の手段として始まり、武家政治でも受け継がれてきた。現憲法下、恩赦は内閣が決定し天皇が認証する。象徴天皇制が広く支持される現代社会にあって、権力者の権威付けを想起させるような制度は不必要ではないか。

 罪を犯した人の更生態度など判決後の事情を考慮して救済する刑事政策的な役割が恩赦にはあると、政府は説明する。誤判からの救済なども根拠として挙げられる。

 だが、司法制度が整い、服役態度に応じて仮釈放が認められたり、確定判決が不服ならば再審を求めたりすることができる。刑事政策的な意義も極めて薄くなっている。

 犯罪被害者対策を重視する中で、被害者の意思と無関係に加害者を救済する矛盾も制度は抱える。

 中央更生保護審査会が個別に審査する常時恩赦が毎年実施されている。これとは別に、皇位継承などを理由に一律の恩赦を行うことは、もはや国民の理解を得られまい。

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