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子どもの権利条約批准25年 一向になくならない児童虐待

かつて育ての親に虐待された男性は、今、苦しんでいる子どもへ届ける言葉として「逃げてもいいんだよ」と記した=福岡市中央区で2019年4月24日午後2時33分、青木絵美撮影

 国連の子どもの権利委員会が2月、子どもへの暴力や虐待事件が相次ぐ日本への強い懸念を示し、政府に虐待防止に取り組むよう勧告した。子どもの人権を保障する国連の「子どもの権利条約」を日本が批准して今年で25年になるが、悲惨な事件は一向になくならない。5日は「こどもの日」。専門家は、日本では「子どもは体罰をしてでもしつける対象」という考え方が根強く、「子どもの権利」がないがしろにされていると指摘する。

 「一人でも話をできる大人がいたら、違ったかもしれない」。福岡県内に住む30代男性は子どもの頃、生みの親の離婚を機に預けられた育ての親から激しい暴力や虐待を受け続け、満足に食事を与えてもらえない時期もあった。

 気を失うまで激しく殴られた小学3年のある日、「このままでは死ぬ」と恐怖を覚え、交番に駆け込んで「うちに帰りたくない」と訴えた。ところが、警察官からは「早く帰りなさい」と言われ、あざにも気付いてもらえなかったという。「もう誰にも相談しない」。男性は大人に絶望したこの出来事を今も鮮明に覚えている。

 男性は今年1月、千葉県野田市で小学4年の栗原心愛(みあ)さんが虐待死した事件のニュースを見て「なぜ救えなかったのか」と無力感を抱いた。事件では、心愛さんが父親の家庭内虐待を訴えた学校アンケートを、市教委の職員が父親に渡していた。

 なぜこうした事件が相次ぎ、子ども自身による勇気の告発も軽視されるのか。東海大の山下雅彦名誉教授(教育学)は「日本では子どもを力なき者、未熟者とみる傾向があり、体罰をしてでもしつける、という子ども観を払拭(ふっしょく)できていない。市民社会も子どもを軽く見ている」と語る。

 これに対し、国連の子どもの権利条約は、18歳未満の子どもも大人と同じ権利の主体と位置づけ、▽暴力や搾取から守られる権利▽教育を受ける権利――などとともに、自由に意見を表明する権利も保障する。

 締約国が条約が定める義務を守っているか監視する子どもの権利委員会は1月、日本の状況を審査し、2月、子どもへの暴力や虐待が「高い水準で発生している」と懸念を表明。その上で政府に▽子どもの通報や苦情申し立てなどを受け付ける仕組みづくり▽虐待防止の教育プログラム強化▽家庭への適切な支援――などを勧告し、法律による体罰の全面的な禁止も求めた。

 委員会を傍聴した子どもの権利条約総合研究所運営委員の平野裕二さん(51)は「日本は西洋に比べ子どもの権利保障が遅れていることが明らかになった」と残念がる。

 国内でも親権者による体罰禁止を盛り込んだ児童虐待防止法などの改正案が今月、国会で審議入り予定だ。山下名誉教授は、体罰を法律で禁止したスウェーデンなどでは子どもへの虐待が減少したとして「日本でも体罰禁止を急ぐべきだ」と指摘。その上で「権利条約を踏まえた政策の実現には、子どもに関わる市民の意識改革も大事だ」と強調した。【青木絵美】

昨年8万件 増加の一途

 警察庁の統計によると、全国の警察が児童相談所に児童虐待を通告した件数は昨年初めて8万件を超え、2004年の統計開始以来増加の一途をたどる。逮捕などの摘発件数は1380件で、加害者(1419人)の7割を実親が占めるが、養親や、実親の再婚相手なども2割を超える。

ことば「子どもの権利条約」

 子どもを単に保護の対象ではなく権利の主体と位置づけ、18歳未満のすべての子どもの基本的人権を国際的に保障する。前文と本文54条から成る。国連で1989年に採択された。日本は94年に批准し、158番目の締約国となった。これまでに196の国・地域が締結している。

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