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ウクライナに新大統領 ロシアは紛争収束に動け

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 ウクライナの大統領選挙の決選投票で人気コメディアンのゼレンスキー氏が圧勝した。今月中にも就任する。対立が続くロシアとどう向き合うかが注目される。

 政治経験がない41歳だ。テレビドラマで高校教師がひょんなことから大統領になる役を演じた。それを地でいくかのように、汚職撲滅や経済改革を掲げ、得票率7割という圧倒的な支持を受けた。

 現職のポロシェンコ氏は、既成政治と新興財閥の癒着や、経済の低迷を変えられなかった。地滑り的勝利は国民の募る不満の証しだろう。

 ゼレンスキー氏は、ロシアに敵対的な現職と異なり「対話が必要」とも唱えている。ゆえに対露外交のかじ取りが今後の焦点となりそうだ。

 旧ソ連のウクライナは1991年の独立後、ロシアに翻弄(ほんろう)されてきた。国内では親欧米派と親露派が対立し、時の政権が欧州連合(EU)などに近づこうとすると、旧ソ連という勢力圏を維持したいロシアは、執拗(しつよう)に介入してきた。

 現在続くウクライナ危機もその典型だ。2014年、親露派から親欧米派が政権を奪取すると、ロシアはクリミア半島を一方的に編入し、東部では親露派武装勢力が紛争を起こした。紛争の死者は5年間で1万3000人を数えている。

 ゼレンスキー氏は中断したままのウクライナと独仏露の4カ国による和平協議を再開させたい考えだ。この協議による停戦合意は履行できずにいる。対話して混乱を解消したいという姿勢は、紛争に嫌気がさしている国民の声をも背景にしている。

 問題はロシアが和平協議を含む対話に応じるかどうかだ。ロシア側にはウクライナとの関係改善を期待する向きはあるものの、プーチン大統領は対話の是非を明言していない。

 だが、ロシアにとってもクリミア問題での国際的な孤立や紛争の泥沼化は、もう避けたいはずだ。国内ではロシア兵の犠牲が出ていることで、紛争に反発する声もある。ロシア政府はウクライナ政権の交代を機会に、対話に乗り出し、紛争の収束へと方向転換すべきだ。

 ゼレンスキー氏の政治手腕は未知数だが、国民の支持という強みがある。独仏など国際社会も事態の収束へ向けて後押しすべきだ。

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