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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「パンダ サル バナナ」。この三つの単語から…

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 「パンダ サル バナナ」。この三つの単語から近い関係の二つを選べ--こう聞かれたら、あなたはどの単語を選ぶだろうか。この質問を米国人と中国人の大学生を対象に行った心理学者の実験がある▲多かったのは米国人では「パンダ サル」、中国人は「サル バナナ」だった。前者は動物という「分類」を、後者は「サルはバナナを食べる」という「関係」を重視したわけだ(ニスベット著「木を見る西洋人 森を見る東洋人」)▲西洋人は分析的かつ論理的、東洋人は物事の具体的関係性を重視するとの説を裏付けるデータである。その説の当否はともかく、世の中には論理も関係性も超越した「パンダ バナナ」理論により中国との交渉にのぞむ米国人もいる▲令和の日経平均を2万2000円割れで始動させたトランプ米大統領の対中関税追加引き上げ表明だった。米中貿易交渉の閣僚級協議を前に中国の譲歩を迫るブラフ(威嚇(いかく))という見方が有力だが、株安の波はぐるり地球を周回した▲自らを「タリフマン(関税マン)」と呼ぶトランプ氏は「関税は中国側が負担している」という理論で世を驚かせた。もしや本気か?と市場が動揺するのも無理はない。むろん大半が米国の小売業者や消費者に回る高関税のツケである▲知的所有権保護などでの米国の対中姿勢に同調する日欧もタリフマンの現状認識のあやしさには閉口(へいこう)する。「パンダ サル バナナ」のすべての組み合わせの間で危うく揺らぐ米中貿易戦争発火の瀬戸際(せとぎわ)である。

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