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連鎖を断つ

飲酒し自動車盗から4年…知的障害者、平穏な生活 更生に地元が緊密連携

グループホームの庭に植えてある花に水をやる男性。家族に迷惑をかけない平穏な生活を守るため「二度と事件を起こさない」と誓う=長崎県佐世保市で2019年4月15日午後3時22分、宮原健太撮影

 ささいなきっかけで再犯を繰り返す障害者や高齢者。再犯の連鎖を断つ道はあるのか。現状と課題を探った。

 「そちらで支援を受けていた男性が、酒を飲んで民家に止めてあった車を盗んで運転し逮捕されました」

 再犯を繰り返す知的障害者や高齢者らを支援する長崎県地域生活定着支援センターの伊豆丸剛史(いずまるたかし)所長の携帯電話に、同県大村市の社会福祉協議会(社協)の職員から電話があったのは2015年5月のことだった。

 逮捕された男性(39)は軽度から中程度の知的障害があり、子供のころから万引きやバイク盗などの窃盗を繰り返していた。定職には就けず、11年に起こしたさい銭盗や住居侵入の罪で執行猶予付き判決を受けた後、センターが運営する自立訓練施設に入所。しかし、大村市に住んでいた家族に会いたい一心で何度も失踪したため、施設側がいったん家に帰した直後にまたも逮捕されたのだった。

 運転免許もない男性が飲酒し、車を盗んだのには理由があった。やはり知的障害がある女性と結婚し、長男と長女も授かったが、盗みを繰り返すうちに実家で一緒に暮らしていた妻は出て行き、前後して長女も事故で亡くした。寂しさを紛らわせるため酒に頼り、酔った勢いで車を盗んでしまったのだ。

 大村市社協からの連絡を受けた後、伊豆丸所長は裁判所の許可があれば弁護士資格がなくてもなれる特別弁護人に選任され、男性と接見を重ねた。男性の意向も確認し、グループホームで生活しながら作業所で働く更生支援計画を作成。男性は起訴されたが、保護観察付き執行猶予の判決を受けた。

 逮捕から4年。男性の盗癖はぴたりと止まった。現在生活する長崎県佐世保市のグループホームで会った記者に「長男のためにも盗みをしないようにしている」と話した。この春、中学生になった長男には最近、久しぶりに会ったという。「背が高くなっていた。もっと伸びそう」とはにかんだ。作業所で洗い物を担当する男性の仕事ぶりを、作業所の責任者は「とても丁寧」と語る。

 伊豆丸所長は男性のケースについて「関係機関とつながっていたからこそ迅速に更生計画を練ることができた」と振り返る。大村市は以前から市内に住む出所者の再犯防止に官民挙げて取り組んでおり、関係機関が緊密に連携してきた。だからこそ男性が逮捕された後、すぐに社協から専門機関でもあるセンターに連絡が入った。

 大村市は18年4月、取り組みをさらに前進させ、社協を事務局に障害者や高齢者の再犯防止を専門とした連絡組織を設置。市やセンター、弁護士、長崎刑務所の社会福祉士らが月1回会合を開き、情報共有をしている。ただ、こうした取り組みをしている自治体はごく一部だ。

 国は16年に再犯防止推進法を制定し、地方自治体も再犯防止施策を講じる責務があると明記した。だが、同法に努力義務として盛り込まれた地方再犯防止推進計画を策定した都道府県は4月1日現在14にとどまる。再犯防止は国の役割とされてきた経緯もあり、西日本のある自治体の担当者は「どういった取り組みが求められているのかイメージしにくい」と打ち明ける。法の理念は、まだまだ自治体に浸透していない。

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