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大谷世代の元高校球児 日本一の夢は「eプロ野球」で

BOW川選手=2019年2月15日20:13、東京都内で中村有花撮影

 eスポーツの世界で「大谷世代」のプレーヤーが日本一に輝いた。野球ゲームの「実況パワフルプロ野球」(略称パワプロ)を舞台に戦う「eBASEBALLパワプロ・プロリーグ」で昨季、西武の主将を務めた長野・佐久長聖高出身の元高校球児、BOW川選手(本名・大川泰広さん)がチームを優勝に導いた。米大リーグ、エンゼルスの投打の「二刀流」の大谷翔平らと同学年で「高校野球で悔しい思いをした分、人生の中で絶対に日本一になりたかった」という夢をeスポーツでかなえた。そんなBOW川選手に、今秋2季目を迎える「eプロ野球」の魅力を聞いた。【構成・中村有花】

 (1月に行われた日本シリーズ。パ・リーグ優勝の西武の主将として、セ・リーグ覇者のDeNAを6―3で破り、初代日本一になった)

 BOW川 日本一になりたい思いがある中で、灯をともしてくれたのがパワプロだった。大学では軟式野球部で1、2年の時には全国大会のベンチ入りメンバーにもなった。でも、肩を痛め、3年で選手を断念した。そんな時に初めて出場したのが「パワプロフェスティバル2016」。対戦型で日本一を決める大会だった。それまでは、練習を重ねてオリジナル選手を育成する「サクセスモード」や、高校野球の監督として甲子園に導く「栄冠ナインモード」でパワプロを楽しんでいた。対戦型は挑戦し始めたばかりだったので、初めはなかなか勝てなかったけれど、徐々に通用するようになった。そこは実際にプレーする現実の野球と同じ面白さがある。最初から、みんな野球がうまいわけじゃない。

eBASEBALLパワプロ・プロリーグの日本シリーズで優勝を決め、喜ぶ西武の選手(左)=東京都内で2019年1月12日、中村有花撮影

 (BOW川選手が野球とゲームに出合ったのは、ほぼ同じ時期)

 ◆野球は小学3年から。学校の親子レクリエーションでドッジボールをしていた時、同級生の父親が少年野球の監督で「すごい球を投げるから、一緒に野球をやらないか」と声を掛けてもらった。見学に行くと、学校の仲の良い子も野球をやっていて、夏に入部した。ゲームはその少し前から。パワプロに出合ったのは野球を始めたのとほぼ同じタイミングだった。

 野球のルールは子どもにとっては難しいが、半分ぐらいはパワプロで覚えることができた。例えば、インフィールドフライやスリーバント失敗など細かいルールはパワプロに反映されていた。また、野球の「セオリー」やエンドランをかけるタイミング、守備のフォーメーションなど頭で考えなくても反応できるのは実際の野球経験が大きい。

 (中学の野球では投手一筋。エースだった)

 ◆中学からは野球が本格的になる分、時間が短くはなったが、ゲームはやっていた。選手を育てたり、高校野球で活躍したり、ゲームの中では現実では難しい夢をかなえられる。自分もこういうプレーヤーになりたいと思いながらゲームをすることもモチベーションの一つだった。

 (高校では甲子園を目指して長野・佐久長聖高へ進学。春夏合わせて9回の甲子園出場を数える名門校)

自身の野球経験やパワプロへの思いを語るBOW川選手=2019年2月15日20:13、東京都内で中村有花撮影

 ◆野球部の寮では携帯電話は禁止でゲームなんてもってのほか。それでも寮に入って野球に打ち込むことを選んだのは、上を目指せるのは限られた期間しかないと思ったから。高校3年間頑張って、大学、社会人、プロを目指せるぐらいまで活躍できたら、さらに上の野球の世界を目指して頑張ろうと思っていた。

 僕が高校3年の時、夏の甲子園に行った。ちょうど大谷(当時岩手・花巻東高)、藤浪晋太郎(現阪神、当時大阪桐蔭高)の年代で、スター選手がいたが、僕はチーム内の競争に勝てずに悔しい思いをした一人。パワプロでここまで勝ちたいと思うのは高校で自分が勝てなかったからという思いもある。

 (パワプロ・プロリーグのドラフト会議は9月。BOW川選手は西武に1位指名を受け、なたでここ選手、ミリオン選手とチームを組んだ)

 ◆最初は「力を合わせて、仲良く頑張ろう」という雰囲気かなと思ったけれど、その日のうちに、優勝するためにできることをやっていこうと、同じ方向で話ができた。その中で僕が提案したのが、前日練習。試合は原則、毎週日曜にある。2人は土曜のうちに地方から大会会場に来る。だから、土曜日に、都内に集まって練習しませんかと持ちかけた。強制してやるものでもないと思っていたが、日本一になるためならぜひやりたいと、2人に言ってもらって実現した。

 パワプロでは実際の能力や成績を反映した実在する選手を使ってプレーできる。西武は打線に注目されがちだけど、時間を割いたのは細かいプレーだった。例えば盗塁。相手がソフトバンクの甲斐拓也捕手だったとすると、本当に足が速い能力を持った選手ですら、ギリギリ決まるかどうか。練習では、どこのラインならセーフになるか、同じバッテリーを相手にして足の速い順に打順を組んで、一人一人盗塁をさせてみる。練習して得たデータは共通認識として頭にたたき込んだ。守備も同じようにデータを取ってシフトを敷いた。12球団で一番極端だったかもしれないが、それが日本シリーズでも生きた。

 (セ、パ両リーグ各6球団による総当たりの「ペナントレース」は1節につき、プレーヤー1人が1試合ずつ、チーム合計で3試合を戦い、第5節までの計15試合でリーグ優勝を争う。プロ野球のクライマックスシリーズ(CS)にあたる「eリーグ代表決定戦」を経て、日本シリーズへと進む。西武はレギュラーシーズンで開幕から11連勝を飾り、優勝を果たした)

 ◆チームで大事にしていたのは個々を尊重すること。試合中、ほかの2人は選手の後ろに座る。声を掛け合うことがチームプレーみたいに映るが、あくまで試合をするのは1人のプレーヤーだから後ろから余計な声を掛けないようにしようと決めた。プレーヤーが迷ったときに相談すればいい。

 それはリアル野球も同じで、僕は投手をやっていた時に、そう思っていた。ただ投手に声を掛けても、掛けるだけでは意味がないし、逆にありがたい声の掛け方もある。このチームでは、実際に不安になった時、2人の仲間はとても重要だった。チームとしては一体感を持って戦えた。

 (パワプロでつかんだ日本一。周囲の反応は想像以上だった)

 ◆試合当日には勤め先の会社の人からメッセージがあり、会社の人たちがこんなに気にしてくれているんだと、うれしかった。会社には、予選が始まった8月の時点で大会の経緯を説明していたが、だんだんメディアで取り上げてもらうことも増え、びっくりしていたようだった。家族からも、勝つごとに姉がメッセージをくれたり、両親もゲームには詳しくないが、新聞を見て「息子がこんなに新聞に載るようになってうれしい」と言ってくれたりした。

試合の様子が映し出された大きなモニターを背に、eBASEBALLパワプロ・プロリーグの開幕戦を戦うヤクルトと中日のプレーヤーたち=東京都内で2018年11月10日午後3時5分、中村有花撮影

 (eスポーツを「スポーツ」の枠で捉える動きも広まっている。今秋の茨城国体では文化プログラムとして「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」を初開催。また、3月には高校生が同じ学校でチームを組み対戦型コンピューターゲームの腕前を競う「第1回全国高校eスポーツ選手権」も実施された)

 ◆やはりゲームだけを頑張っても納得はしてもらえない。僕は小学生の頃からゲームも、野球の練習も、学校の勉強も一応全部やっていた。全部やることが認めてもらう条件だと勝手に思っていた。

 数をこなせば、それなりにゲームはうまくなる。だが、それだけでは、さらにうまくはなれない。例えば苦手な速球をどう攻略するかなど目的を持って、考えながら練習することがすごく大事。ゲームの中で目標を見つけて練習するというのは、現実の勉強やスポーツにもつながると思う。

 今も仕事を怠けていると「ゲームばっかりやって」と思われるだろうから、仕事もしっかり取り組んでいる。eスポーツの活動で得たことを、少しでも会社に還元できればいい。

第1回eBASEBALLパワプロ・プロリーグ

 日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメントが共同開催。プレーヤーは実際のプロ野球12球団がドラフト会議を開き、各球団3人ずつを指名した。そのプレーヤーたちが昨年11月から1月にかけて野球ゲーム「実況パワフルプロ野球」(パワプロ)を使って日本一を争った。

 セ・パ両リーグに分かれてのペナントレースが5週にわたって週末に開催され、その後、リーグ代表決定戦で勝ち上がったチームが、日本シリーズに出場。第2回大会の実施も決まっており、今年6月に概要が発表される見通し。

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