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つながり紡いで

リコン・アラート 「離婚問題」外国人支え=山野上隆史 /大阪

「外国人のための離婚一日電話相談会」で相談に応じる相談員ら=大阪市内で2019年3月9日

 「日本人の夫に勝手に離婚届を出された。私は、サインなんてしていない」

     離婚届では、親権者は父親になっていた。外国人である母親は子どもと一緒に暮らせなくなり、学校は母親の来校を拒んだため、子どもに会えなくなった。子どもは母親との突然の別れに不安定になり、母親は食事も睡眠も十分に取れなくなった。役所に離婚届の不受理申出を出しておけば防げるが、そんなことを知る由もない。

     婚姻関係の破たんに悩む外国人女性たちに寄り添うのが、とよなか国際交流協会などが結成した団体「リコン・アラート(協議離婚問題研究会)」だ。

     臨床心理士の吉嶋かおりさんは2005年から、とよなか国際交流協会の相談事業に関わる。在住外国人は増加し、日本の婚姻のうち28組に1組が国際結婚。一方で国際結婚したカップルの離婚も増え、本人の同意なしに離婚届を出される「無断離婚」の相談も少なくない。「離婚届の漢字が読めず、別の書類と言われてサインしたり、サインを偽造されたり。裁判なしに離婚できない国も多く、届け出だけで離婚できると知らない人も多い」

     サインを偽造し、無断で離婚届を出すことは有印私文書偽造などの違法行為に当たるが、一旦受理されると、裁判手続きを経ないと取り消せない。「悩みを抱える外国人にとって安心して話ができることは大きな支えになる。無断離婚の問題でも、通訳や情報提供だけになって、本人の気持ちが置いてけぼりになってはいけない」。吉嶋さんは支援者の役割を語る。

     一方で社会への働きかけも重要だ。「なぜ、無断離婚された方が頑張らないといけないのか。何より、両親の離婚で苦しむ子どもたちのために、何かできないか」

     吉嶋さんは、協会職員の山本愛さんらと無断離婚の問題を訴えようと、15年2月にシンポジウムを開いた。シンポにも登壇した立命館大学の二宮周平教授(家族法)から「無断離婚をなくすために何ができるか、関係者で集まろう」と提案を受けた。ここから「リコン・アラート(協議離婚問題研究会)」が始まり、関西で外国人を支援するNGOや国際交流協会、弁護士らが集まった。無断離婚のケースだけでも数十件が寄せられた。

     17年にはウェブサイトを開設し、多言語で離婚届の説明や啓発用パンフレット・動画を発信した。今年3月、大阪弁護士会と「外国人のための離婚一日電話相談会」を開き、25件の相談を受けた。法的対応を含めた支援方法についてまとめたハンドブックを作成中で、秋には出版される。

     外国人労働者の受け入れが拡大され、多文化共生の地域づくりが進む中、多くの人の力を集めて、困りごとを生み出す社会を変えていくための行動も必要だ。リコン・アラートの取り組みは続く。


     地域の活性化や多文化共生に取り組む市民が執筆します。次回は6月7日掲載予定。


     ■人物略歴

    やまのうえ・たかし

     公益財団法人とよなか国際交流協会理事兼事務局長。1977年、大阪生まれ、神戸育ち。高校生のとき、阪神大震災を経験。主な共著に「外国人と共生する地域づくり 大阪・豊中の実践から見えてきたもの」(明石書店)。

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