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人間の活動が自然を破壊し、自らの生活基盤すら損なう事態が生じている。人類の未来も危うい。
世界の科学者が参加する政府間組織「IPBES」が、生物多様性や自然の恵みを評価した報告書は、こんな強い危機感に満ちている。
報告書によれば、人間の活動により、世界の陸地の75%が大幅に改変され、海域の66%が悪影響を受けた。地球温暖化も進んでいる。
その結果、約100万種の動植物が絶滅の危機に直面している。
人間にとっては生存のための行動であっても、他の生物にとっては身勝手と言える状況ではないか。
報告書の指摘を物言わぬ自然の警告と受け止め、私たちは生物多様性を守る道を歩まなければならない。
農作物の75%は受粉をミツバチなど花粉媒介生物に頼る。地域特有の文化も自然が支えている。自然が壊れれば、こうした恵みも失われる。
日常生活では生物多様性の劣化を実感しにくいが、このまま手を打たないと、取り返しのつかない破局を招いてしまう恐れがある。
報告書は、危機を回避する方策はまだあるという。生物多様性を守るという観点を、政治や経済、科学技術などあらゆる分野に取り入れる社会変革を実現することだ。
2010年に名古屋市で開かれた国連生物多様性条約第10回締約国会議で、生物多様性を守るため20年までに達成すべき目標が採択された。 「森林を含む自然生息地の損失速度を少なくとも半減する」など20の個別目標がある。報告書によれば、ほとんどが達成できない見通しだ。
森林の育成が温暖化対策につながるなど、多様性を守ることには多面的な価値がある。会議のホスト国を務めた日本は、目標の実現に向けて世界を主導する責務がある。
報告書の公表にあわせ、フランスで開かれた主要7カ国(G7)環境相会合は「生物多様性憲章」を採択した。各国が多様性保全のための戦略や行動計画を強化することをうたっている。方向性は歓迎できる。
日本は大阪で来月開く主要20カ国・地域(G20)首脳会議で、各国に一層の対応を働きかけるべきだ。人間も自然の一員であり、その恵みなしに繁栄を続けることはできない。この認識を、世界で共有したい。
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