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堀江敏幸・評 『庭とエスキース』=奥山淳志・著

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 (みすず書房・3456円)

北の開拓者の生きざまを描く

 一九九八年、二十五歳の青年編集者が、雑誌の仕事を通して弁造さんという老人に出会う。一九二〇年生まれで、北海道開拓者の最後の世代に属する弁造さんは、取材当時七十八歳。新十津川町のはずれ、石狩川の河岸段丘にあるかつての開墾地の一角で自給自足のための庭を造りつづけていたこの人物の存在感に惹(ひ)かれて、はっきりした計画も理由もなく、青年は写真を撮らせてほしいと頼み込んだ。出会いの二カ月後、彼は岩手県雫石に移り住み、二〇一二年に弁造さんが亡くなるまで、季節ごとに特別な庭を訪ねた。

 庭とはなにか。端的に言えば、ひとつの家族が「永続的に暮らしていけるようにと設計された」空間だ。畑と果樹、林と池からなる有機的なサイクル。そこでは「作業効率と弁造さん独自の美意識が絶妙なバランスで保たれ、早春から晩秋までたくさんの食糧を生み出していた」。出会ったとき、弁造さんはこの庭に建てた十畳ほどの粗末な丸太小屋で暮らして、もう六十年になろうとしていた。独り身の老人の心を、青年は少しずつ開墾して…

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