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沼野充義・評 『シュテットル ポーランド・ユダヤ人の世界』=エヴァ・ホフマン著、小原雅俊・訳

 (みすず書房・5832円)

「絶滅」前の人々の日常を活写

 「シュテットル」とは、東欧のユダヤ人たちがコミュニティを作って住んだ「小さな町」のことである。日本でもよく知られているアメリカのミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』(原作はイディッシュ語作家のショレム・アレイヘム)の舞台となるのも、そういった町の一つだ。シュテットルではイディッシュ語を話すユダヤ人が多様で活気あふれる生活を営み、職人も商人もいて、ユダヤ教のラビもいれば政治活動家もいた。そこでユダヤ人たちは恋愛をし、子供を育て、近隣の非ユダヤ人の住民たちと微妙な緊張をはらんだ共生関係を保ってきたのである。「共生」の振り子は、歴史の流れに翻弄(ほんろう)されながら、融和・協力と、対立・憎しみの間で何度も大きく振れた。そして、第二次世界大戦中のナチスドイツによるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)の結果、数えきれないほど存在していた平和な小宇宙は、住民や文化もろとも消え失せてしまった。 本書が取り上げるのは、そんなシュテットルの一つ、ベラルーシとの国境近くに位置するポーランド北東部の町ブランスクである。ポーランドは第二次世界大戦前、三〇〇万ものユダヤ人口を擁していたが、その大部分がナチスドイツによって「絶滅」された。そしてアウシュヴィッツ、トレブリンカをはじめとする強制収容所の大部分がポーランドに集中し…

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