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雑誌『文藝春秋』6月号に掲載された作家、村上春樹さんのエッセー「猫を棄(す)てる--父親について語るときに僕の語ること」が話題を呼んでいる。これまでプライベートな事柄に関しては寡黙だった作家が、11年前に亡くなった父親のことをはじめ、自らの生い立ちにかかわる私的な事実を赤裸々に明かしているのが驚きだ。
そこに付された2枚の写真も、読者の目を奪うかもしれない。1枚では幼い村上さんがバットを構え、父親がキャッチャー役で構えている。もう1枚には、兵庫県にあった自宅の庭で猫を膝の上に抱える8歳の村上さんが写っている。ほほ笑ましい家庭的なスナップだが、文章の中身は全体に決して幸福なトーンではない。むしろ、かつて長い期間「冷え切った」関係にあったという父親の描き方には、たじろぐほどに突き放したところがある…
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