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社説

スマホ時代のテレビ 活路は自由な発想の先に

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 平成の半ばごろから、当たり前になった光景がある。電車内で人々が、スマートフォンの画面に見入っている姿だ。ゲームに無料通信アプリのLINE(ライン)、映画やドラマの動画視聴も多いだろう。

     インターネットの普及は、人間とメディアの関係を劇的に変えた。60年あまりの歴史をもつテレビを取り巻く環境は、変革の渦の中にある。

     1953年にNHKが日本で初めてテレビ放送を始めた。普及したきっかけは59年4月に行われた皇太子時代の上皇さまと上皇后美智子さまのご結婚パレード中継だ。

     娯楽や情報、教養を提供するとともに、世界を映像でリアルタイムに結んできたテレビだ。社会に多大な影響を及ぼしたことは疑いない。

    「お茶の間」から個へ

     他方、評論家の大宅壮一をして想像力や思考力を低下させるとして「一億総白痴化」と言わしめたのもテレビだ。

     それでも、昭和期には「8時だョ!全員集合」「オレたちひょうきん族」、平成期には「進め!電波少年」「めちゃ×2イケてるッ!」などのヒット番組を生み、子供や若者の文化の発信源となってきた。

     それまでの枠にとらわれない、自由な発想による面白い番組作りが、テレビ局の役割だったのではないか。それがまた、時代と社会を動かしてきたのだろう。

     テレビはまた、日本の家庭のあり方を形作ってきた。だんらんの中心にはテレビがあり、そこには家族の会話があった。

     しかしスマホの登場でメディアは個人が扱うものとなり、お茶の間の文化も衰退した。特に顕著なのが、若者のテレビ離れだ。

     70年にはNHK国民生活時間調査で1日当たり約180分だったテレビ視聴時間は、2017年の総務省調べでは159・4分にまで落ち込んだ。なかでも、10代は73・3分、20代でも91・8分と極端に少ない。

     一方、スマホやタブレット端末などによるネット利用は10代で128・8分、20代で161・4分と、テレビを大きく上回る。

     「内向き化」する社会の大勢とも無関係ではないだろう。そこには単にテレビ離れというだけではない、憂うべき状況が横たわっているようにも思われる。

     「テレビ離れ」を後押しするのは、日本にも15年に参入し、急成長する米ネットフリックスやアマゾンといった動画配信サービスの攻勢だ。動画配信サービスの国内市場は2000億円近いという。

     来春には、高速・大容量通信の「5G」サービスが本格的に始まる。政府が「放送と通信の融合」を推進する中、NHKは今年度中にもすべての番組で放送と同時にインターネット配信を始める。民放も、各局の人気番組をスマホでも自由に見ることができるサービスを行っている。ネット活用は時代の流れなのだ。

    従来の方程式の転換を

     テレビの相対的地位が低下する中で、より深刻なのは民放のビジネスモデルだ。受信料で成り立つNHKとは違い、民放はスポンサー企業の広告費で支えられている。

     電通によると、18年のインターネット広告費は5年連続で2ケタ増の1兆7589億円と、地上波テレビの1兆7848億円に迫る。今年にも逆転すると見られる。番組制作者が危機感を募らせるのは当然だ。

     潤沢な受信料収入に支えられたNHKが、充実したドラマやバラエティー番組を制作する一方、民放の地上波が「つまらなくなった」との声を聞く。しかし、限られた制作費で創意工夫を凝らした番組もある。進取の精神が失われたわけではない。

     例えば、テレビ朝日系「ポツンと一軒家」、テレビ東京系「家、ついて行ってイイですか?」は、市井の人々のリアルな姿を通して、現代社会の一断面を切り取るドキュメンタリータッチの人気バラエティーだ。

     タレントのトークに依拠してきた従来のバラエティーづくりの方程式を覆す発想が斬新であり、それが視聴者にも支持されている。

     テレビ草創期を知るテレビマンユニオン最高顧問でディレクターの今野勉さん(83)は「テレビは見せ物の部分を背負った大衆文化。アートになる必要はない」と言う。

     コミュニケーションツールとして、スマホは確かに便利だ。しかしテレビの「映像」の力でしか伝えられないものもある。未来はまだまだあるはずだ。

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