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読書日記

著者のことば 末盛千枝子さん 美智子さまの素顔活写

末盛千枝子さん=広瀬登撮影

 ■根っこと翼 末盛千枝子(すえもり・ちえこ)さん 新潮社・1404円

     上皇后美智子さまとの20年以上の交流を、親交の深い絵本編集者が振り返った。読書のこと、短歌のこと、音楽のことなどを通じ、生き生きとした素顔が描かれている。

     「蛮勇でした」。書き終わって笑う。雑誌「波」での連載をまとめ、改元を前にした3月末に世に出した。「このエピソードは書きたいけれど、どうでしょう」と美智子さまと時々連絡を取りながらの緊張の執筆だった。でも、美智子さまの英訳本「THE ANIMALS『どうぶつたち』」(まど・みちお詩)や、国際児童図書評議会へ寄せたビデオスピーチ録「橋をかける」の刊行を手がける中で知った素の姿を、<私一人の中にしまっておくのはあまりにもったいない>との思いが勝った。

     強く記憶に残っているのは、美智子さまが声を出しづらい状態になった1993年、葉山御用邸(神奈川県)にお見舞いに訪れた時のこと。「精神科医やカウンセラーの助けは受けられないのですか」と思わず聞いてしまったという。美智子さまは難しいと否定した上で、「こういうお話があってね」と小さい声で新美南吉の「でんでんむしのかなしみ」を語り始めた。

     自分の背中の殻に悲しみがつまっていることに気づいたカタツムリが友達にその不幸を話すと、それはあなただけではなく自分の殻にもつまっていると返される物語。人は誰でもそれぞれの悲しみを背負っている。それを知るからこそ他者にも寄り添える。「4、5歳の時に聞いた話が、ご自分がおつらい時の助けになったと思います」と察する。美智子さまは「橋をかける」で「でんでんむしのかなしみ」に触れ、子供時代の読書が<私に根っこを与え、ある時には翼をくれました>と記した。本書のタイトルはこの一文によっている。

     人気連続テレビドラマ「ビューティフルライフ」の放送を美智子さまが楽しみにしていたことも明かされる。チャーミングな秘話も知る仲だから、「これからご公務はなくなりますが、2度のお引っ越しをしなければいけません」と気をもむ。最後のページまで、そんなこまやかな心遣いと感謝の思いにあふれている。<文と写真・広瀬登>

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