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社説

認知症対策の新大綱案 数値目標ありきの危険性

 政府は新たな認知症対策の大綱案を示した。発症の予防や発症後の進行を遅らせる対策を強化することが柱で、70代の人口に占める認知症の人の割合を6年で6%、10年で約1割減らすことを目標とする。

     現在の認知症の国家戦略「新オレンジプラン」は認知症の人が住み慣れた地域で暮らせるようにすることが対策の中心だが、それに加えて「予防」を前面に出すことになる。

     新大綱案では、医学的な治療・予防法の研究開発を強化するほか、国民の生活習慣の改善を推進する。

     しかし、認知症は発症の原因がまだ解明されておらず、根本的な治療法が確立されていない。数値目標ありきの対策はさまざまな危険性をはらんでいることを指摘したい。

     国内で承認されている認知症治療薬は4種類あるが、いずれも認知症自体を改善することはできず、進行を遅らせる効能にとどまる。

     この中には世界各国での売り上げが年間3000億円を超えた薬もあるが、フランス政府は副作用の割に効果が確認できないとして、この4種類を保険適用から外した。

     政府が数値目標を掲げ、その達成にこだわると、科学的根拠の乏しい薬や補助食品が広まっていく恐れはないだろうか。

     禁煙や節酒が認知症の発症確率を減らす効果があるともされる。ただ、それはあらゆる疾病に言えることで、絶対的な予防法ではない。むしろ発症の確率は個人の特性に負うところが大きいのが実情だ。どんなに節制しても認知症になる人はいる。

     むしろ、政府が予防の旗を振ることで、自己責任を求めたり、認知症を過度に悲観したりする風潮が強まってしまうことも懸念される。

     数値目標を示して予防を重視する背景には、膨らみ続ける社会保障費の抑制に向けた政府の思惑がある。昨年の経済財政諮問会議で民間委員が「認知症の社会的コストは2030年に21兆円を超える」との推計を示したことが発端とされる。

     認知症になっても安心して暮らしていける社会保障制度を整備することが、政府の本来の役割ではないか。まず、財源やマンパワーの確保に全力を挙げるべきだ。それが難しいからといって、予防偏重の政策に走ったのでは、副作用が大きい。

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