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特集ワイド

ふるさと納税、どこへ 過度な返礼品見直し、来月から新制度 除外の4自治体、反論と軌道修正と

ふるさと納税から除外される4市町
2007年、ふるさと納税研究会の初会合であいさつする菅義偉総務相(当時)=丸山博撮影
ふるさと納税制度を所管する石田真敏総務相=2019年5月8日、川田雅浩撮影

 過度な返礼品競争に歯止めはかかるのか? ふるさと納税について、総務省は6月から、制度の趣旨から逸脱しているとした4市町を除外したうえで新制度を始める。もとはといえば、この制度は第1次安倍政権が鳴り物入りで始めたものだが、制度の微修正で、「官製カタログショッピング」から脱却できるのだろうか。【奥村隆】

 そもそも、である。ふるさと納税は菅義偉元総務相の提唱で、2008年に始まった。地方から都市部に移り住んだ人が「故郷を大切にしたい」との思いで納税先を自主的に選ぶことを想定していた。

 しかし、自治体間で高額の返礼品による寄付獲得競争が起き、事実上、税金のキックバック制度となってしまった。

 改正地方税法が6月に施行されると、返礼品の調達費は寄付額の30%以下、返礼品は地場産品に限るという新基準が適用される。これまで基準に反する取り組みを続けていたとして、大阪府泉佐野市▽静岡県小山町▽和歌山県高野町▽佐賀県みやき町の4市町が、ふるさと納税による税控除の対象外となる。

 こうした総務省の対応に、4市町は不満を隠さない。「まるで踏み絵のようだ」と不満を漏らすのは泉佐野市の八島弘之副市長だ。「法施行前の取り組みを踏まえるという行為は『法の不遡及(そきゅう)』の原則から逸脱しており、疑問を感じる」と、排除理由の説明を求めて総務省に質問状を提出した。

 泉佐野市はふるさと納税で大きな恩恵を受けてきた。08年度に約700万円だった寄付額は、地元産以外の豪華な返礼品を取りそろえて返礼率を上げたことで爆発的に増え続けた。18年度には500億円近くまで伸び、10年前の7000倍に達した。これは市の一般会計予算(約516億円)に匹敵する金額だ。仮に60%分の返礼品を贈っても、約200億円もの「粗利」が手元に残る計算だ。

 もちろん、ふるさと納税に頼らざるを得ない事情もあった。対岸に関西国際空港が1994年に開港して以降、連絡橋の固定資産税が毎年約8億円、市に入っていたが、10年前に国有化されて以降は途絶えた。

 だが、制度の対象外になると、6月以降に寄付する納税者は居住地の自治体から住民税の控除を受けられなくなる。ふるさと納税額は今後、限りなくゼロに近くなるとみられている。

 市側も手をこまねいているわけではない。市直営の特設サイトを開設し、「300億円限定キャンペーン」と称して寄付を募っている。新制度が始まる前の最後の駆け込み需要を見込んで、今月末まで寄付を受け付ける。返礼品は地元の特産品とネット通販大手「アマゾン」のギフト券で、返礼率は最高60%に達する。

 仮に新制度への参加を認められた場合でも、泉佐野市は「返礼率30%では他の自治体との競争で優位に立てなくなるため、寄付額は激減する」と予測。市職員の間では「新制度に参加できても99%減、参加できなくても100%減で大差はない」との諦めの声が出ているという。

 千代松大耕(ひろやす)市長はA4判38枚に及ぶ反論文を作成し、こう主張している。「総務省の恣意(しい)的な解釈によってふるさと納税に参加できる自治体を選ぶことが可能な制度になったこと、地方自治体が総務省の機嫌を伺わざるを得ないような、地方自治の理念から程遠いルールになったことに、強い危惧を抱いています」

残る「不毛な奪い合い」

 「地方の自主性を尊重していく方針に逆行しているのではないか」。総務省に強い言いぶりで反論するのは和歌山県高野町の平野嘉也町長だ。この町は最大50%の返礼率で換金性の高い旅行券を贈ることで、18年度は196億円を集めた。空海が開いた高野山は世界遺産の一角にあり、関西有数の観光地。平野町長は「旅行券は弘法大師ゆかりの地を巡ってもらうためであり、地方創生の趣旨に沿う。丁寧な議論もなく、このような事態になったのは非常に残念。総務省こそ理解を示すべきだ」と強調。しかし、「総務省の方針には従わざるを得ない。一日でも早く復帰させていただきたい」と軌道修正を図る方針だ。

 住民はどう受け止めているのか? 高野山の沿道にある土産品店の男性経営者は「石田真敏総務相が地元の和歌山2区選出なので、今回は見逃してくれるかもと期待する声もあったが、そんなことになればかえって信頼を失う。旅行券に頼らなくても、高野山には他にはない魅力があるはず」と淡々と話す。

 静岡県小山町では、ふるさと納税への取り組み姿勢が、4月の町長選の争点の一つになった。前町長の込山正秀氏はアマゾンギフト券を返礼品に使い、返礼率を40%に設定して、18年度に約250億円を集めた。これを活用して町内の幼稚園と小中学校の給食費を完全無料化したが、総務省の怒りを買うことに。

 町長選では、こうした手法を批判する池谷晴一氏が初当選し、就任後、総務省に足を運んで「制度の趣旨を逸脱し、自治体間の返礼品競争を招いてしまった」と謝罪。そして実際に除外が決まると、14日の記者会見で「総務省からは新制度にのっとり客観的に判断すると説明されていたのに残念」と割り切れない思いをにじませた。来年度以降の復活に向け、総務省の指示に従って再申請する方針という。

 ふるさと納税で小中学校の給食費や18歳以下の医療費を無料化していたのが、佐賀県みやき町。返礼品にギフト券や旅行券、タブレット端末などを取りそろえ、15の仲介サイトを使って18年度は168億円を集めた。

 総務省の決定を受け、末安伸之町長は「決定を真摯(しんし)に受け止め、サイトを閉鎖する」と表明。給食費や医療費を無料にする政策は、これまでのストックで当面は続けられる見込みだという。

 ふるさと納税の効果を認めながらも、住民側からは疑問の声も出ている。泉佐野市内で特産品の泉州タオルを製造する経営者は「国産タオルの売れ行きが伸びず、廃業する業者も出る中、ふるさと納税の返礼品で全国の人に注目してもらえるのはありがたかった」と振り返りながらも、こう明かす。「本来なら泉佐野以外の自治体で福祉や教育に使われるはずの税金を集め、泉州タオルに形を変えたのが実態。しかも、税金を多く支払える人たちに払い戻されている。お得感による需要という『麻薬』を注射され続けている感じが拭えなかった」

 「麻薬」という表現は穏やかではないが、確かに返礼品目当ての寄付に頼り切った税収構造では、地方自治がいずれ立ちゆかなくなる恐れがある。

 元鳥取県知事で元総務相の片山善博・早稲田大大学院教授は「返礼率を30%にしても、不毛な税の奪い合いに変わりはない。大半の人は寄付すると有利な自治体を選んでおり、ふるさととは無関係のめちゃくちゃな寄付金控除制度になっている。『ふるさと納税』と呼ぶのはミスリード。制度自体をやめるべきだ」と指摘する。

 小手先のさじ加減よりも、「公正な税の配分」という原点に立ち返るべきではないだろうか。

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