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カンヌ映画祭便り

2019第10日 体育大出身・吉開さんの短編「Grand Bouquet」上映

監督週間で上映された短編作品「Grand Bouquet」を監督した吉開菜央さん(右)と出演しているハンナ・チャンさん=フランス・カンヌで2019年5月23日、小林祥晃撮影
「MEKTOUB,MY LOVE:INTERMEZZO」の上映翌日に記者会見したアブデラティフ・ケシシュ監督(右から2人目)。ヒロインを演じたマリエ・ベルナールさん(左端)は、どことなくデビュー当時の宮沢りえさんを思い出させる雰囲気=フランス・カンヌで2019年5月24日、小林祥晃撮影

 今年のカンヌ国際映画祭は、曇りや雨の日が多かったのですが、10日目の23日は、まさに 「C’est Cannes!(これがカンヌだ!)」というような強い日差しと青空が戻ってきました。

 この日は「監督週間」の短編部門で、日本人の吉開菜央さん(31)が監督した短編「Grand Bouquet」の上映がありました。吉開さんはまだ若い映像作家ですが、ダンサー、振付師としての顔も持っています。シンガー・ソングライター、米津玄師さんのヒット曲「Lemon」のミュージックビデオで、全編にわたってダンスをしている女性と言えば「ああ、あの人か!」と思う人も少なくないのではないでしょうか。

 吉開さんは山口県出身。日本女子体育大で舞踊学を専攻している頃、ダンスの映像を撮り始めたのがきっかけで映画に興味を持ち、卒業後、東京芸大大学院映像研究科に入学したというユニークな経歴の持ち主です。

 この大学院は近年、多数の若手映画監督を輩出していることでも知られています。昨年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映された「寝ても覚めても」の浜口竜介監督もその一人。また昨年のカンヌ国際映画祭では、同大学院教授の佐藤雅彦さんとその教え子らによる製作チームで共同監督した「どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている」も、短編コンペティション部門で上映されています。

 「Grand Bouquet」は、実写とコンピューターグラフィックス(CG)を組み合わせた15の作品で、香港で女優・モデルとして活躍するハンナ・チャンさん(25)が出演しています。CGで描かれた黒い雲のような物体がチャンさん演じる女性に近づき、彼女は苦しみます。そして、黒い物体は彼女に襲いかかり、何度も投げ飛ばすのです。それでも彼女は立ち上がり、苦しみながら抵抗する。せりふはなく、ハンナさんが身体表現だけでメッセージを伝える作品です。

 吉開さんは上映前の舞台あいさつに登壇し、「観客が自由に解釈できる作品です。体で感じながら見てほしい」と英語で話しました。私は、若い女性の生きづらさや困難をイメージしているように感じましたが、他の数百人の観客もそれぞれの思いを投影しながら見入っていたようで、衝撃的な場面では「はっ」と驚くような息づかいが聞こえてきました。コミカルな場面では笑いも起き、上映後はもちろん、大きな拍手が湧き上がりました。

 吉開さんはほっとした表情で「どのように見てもらえるか、とても緊張していたけれど、観客の皆さんが集中してみてくれたようでうれしかった」と話しました。カンヌ滞在中は他の上映作品も時間の許す限り見たそうで、「カンヌ映画祭は『おもしろ度』が違う。娯楽性、芸術性のレベルの高い作品が多くて、とても刺激になりました。私もいつか長編映画にチャレンジしてみたい」と話していました。

 カンヌでは、どうしてもベテラン監督や有名俳優が出演する作品が注目されがちですが、吉開監督のような若手監督や学生監督を発掘し、育てる取り組みも行われています。こうした「新陳代謝」がカンヌ映画祭に活気を与え、結果的に「世界最大の映画祭」としての基盤を固めているのではないか。そんなことを考えさせてくれた1日でした。【小林祥晃】

今日のコンペティション

 マルコ・ベロッキオ監督の「THE TRAITOR」は、実在したイタリアの大物マフィアの伝記映画。タイトルは「裏切り者」という意味だそう。背景や人間関係がよく分からないまま、とにかく多数の男が殺されるが、ドラマチックな裁判シーンには引き込まれた。

 アブデラティフ・ケシシュ監督の「MEKTOUB,MY LOVE:INTERMEZZO」は、上映開始が午後10時。しかも約3時間半という長尺で、劇場を出たのは午前1時半過ぎ。若者がナイトクラブで踊りまくり、おしゃべりする様子をひたすら追い続けるという斬新なつくりで、深夜に見たためか、鑑賞後の高揚感、陶酔感があった。

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