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週刊サラダぼうる・森まゆみ

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てくてくまち再見 入谷の快哉湯 街のシンボル残し

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4月27日のプレオープニングの日に集まってきた人々=森さん提供
4月27日のプレオープニングの日に集まってきた人々=森さん提供

 「恐れ入りました」という時に、江戸っ子は「恐れ入谷の鬼子母神」という言い回しをよく使っていた。「朝顔の入谷豆腐の根岸かな」という正岡子規の句もある。これは入谷の朝顔市と根岸の豆腐の名店「笹乃雪」が題材だ。

 その入谷駅に近い下谷2丁目17の11に、快哉湯(かいさいゆ)という銭湯があった。金杉通りと昭和通りに挟まれた横町(よこちょう)で、明治の末から営業してきた。3・11の大震災で、脱衣場と浴室の間の引き戸が開かなくなってしまった。ボイラーも傷んでいる。これを直してまで営業が続けられるか。「息子に後を継ぐか、と聞くのも怖かった。聞かなくてもわかっていました」とご主人の頓所(とんしょ)政彦さん。「風呂屋って本当に長時間労働なの。昼夜逆転、休みも取れない」と奥様。持ち主は悩んだ末、2016年、廃業を決意、しかしこの地域になじんだ建物は残したかった。

 台東区には「たいとう歴史都市研究会」(椎原晶子理事長)があり、谷中の柏湯は「スカイザバスハウス」という現代アートのギャラリーとして再生された。この団体に相談したところ、理事の中村出(いずる)さんがやってきた。ここには奇(く)しき因縁がある。

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