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クマの出没、山口県内で相次ぐ 過疎化で生息域管理難航、進出域拡大

2015年8月に山口市内で撮影されたツキノワグマ=山口県農林総合技術センター提供

 クマの出没が山口県内で相次いでいる。県自然保護課によると、県東部を中心に今年度の目撃件数(24日現在)は前年同期比約1.5倍の57件に達し、ツキノワグマ6頭を捕獲、5頭を殺処分した。件数は近年増加傾向にあり、過疎高齢化による地域の衰退で、クマの進出地域が広がっていることなどが背景にあるとみられる。県は人とクマが接触しない環境づくりに取り組んでいるが、整備が追いつかず苦慮している。【平塚裕介】

 12日午後8時ごろ、岩国市周東町祖生の60代女性は、自宅の玄関に覆いかぶさる体長約1メートルのクマを見つけた。「黒い塊が扉を引っかいていて、目が合ってクマだと分かった。こんなことは今までなかった」と振り返る。出没した地域の小学校では登下校時に教員や保護者が付き添うなど、市民生活に影響が出ている。岩国市によると、今年度の市内での目撃件数(24日現在)は39件で、例年同期の約4倍に上るという。

 行政は対応に追われた。17日には岩国市や県、猟友会などで緊急対策会議を開き、パトロール強化やクマが興味を持つ生ゴミなどを屋外に置かないよう改めて呼び掛けることを確認した。

 なぜ出没が増えたのか。保護政策による頭数回復に加え、県自然保護課の担当者は「クマと人が接触しない環境作りが進んでいない」と打ち明ける。

 県内のツキノワグマは西中国地域個体群と呼ばれ、広島、島根、山口の3県に生息する。山林開発などで激減したため、環境省は絶滅のおそれがあるとして、1994年度に3県へ狩猟禁止措置を発令した。県は97年度に保護管理計画を定め、2002年度には広島、島根、山口の3県合同で広域的に取り組むことにした。

 推定生息数は99年の約480頭から15年に約850頭と約15年間で2倍近く増え、現在は安定している。県内の目撃件数は大量出没した年もありつつ、増減を繰り返しながら増加傾向だ。10年度には最近20年間で最多の435件だった。

 反面、人身被害や人里への出没が増加したため、保護に重点を置いてきた3県は方針を修正した。17年度から人の生活圏とクマの生息域を分ける「ゾーニング管理」を保護計画へ新たに盛り込んだ。

 しかし、計画は難航している。県自然保護課によると、県内は山間部に点在する集落が多く、実施が難しいという。それでも、これまでは地域住民が自発的にやぶを刈り、見通しを良くして、クマを寄せ付けない緩衝地帯が作られていた。近年は過疎高齢化で里山の荒廃が進み、より困難な状況に陥っている。養蜂箱を壊される被害に遭った岩国市由宇町神東の男性(79)は「近所の道は使う人が少なくなって、草木が茂っている。クマが隠れられる場所が増えている」と不安をもらす。

 クマのゾーニング管理に詳しい島根県鳥獣対策室の沢田誠吾さん(42)は「西中国は中山間地域の割合が高く、ゾーニング管理が他地域よりも難しい。運用は手探りが続いている」と指摘。県は「今後も各自治体と情報を共有し、対策の進捗(しんちょく)と難航する原因を精査したい」と話す。

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