旧優生保護法を問う
強制不妊判決 原告の女性落胆「何のための努力だった」
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障害のある人もない人も強制不妊の対象にした旧優生保護法について、「憲法違反」だと明確に認めつつ、原告の賠償請求を退けた28日の仙台地裁判決。国策によって尊厳を奪われてきた人々の「国の責任を認めて」という切なる願いは届かなかった。全国で相次ぐ被害者による国家賠償請求訴訟で初めての判決だっただけに、原告や弁護団の間には深い失望と憤りが広がった。【上東麻子、滝沢一誠、岩崎歩】
「原告らの請求をいずれも棄却する」――。法廷で中島基至裁判長が判決の主文を読み上げると、「佐藤路子」の名で60代の女性原告を支える義姉と、「飯塚淳子」の仮名で被害を訴えてきた70代の女性原告は、ぼうぜんとした表情で顔を見合わせた。約40人の弁護団も一様に厳しい表情でメモを取り続けた。
「がっかりです。これまで何のためにやってきたのか」。60年前に不妊手術を強制され、20年前から被害を訴えてきた飯塚さんは判決後、取り囲んだ報道陣の前でうなだれた。
判決後に開かれた記者会見の壇上には、東京訴訟原告の北三郎さん(仮名、76歳)や、仙台訴訟原告の東二郎さん(仮名、70代)、全国から駆けつけた弁護士ら10人以上もひな壇に並んだが、誰もが暗い表情を隠さなかった。弁護団長の新里宏二弁護士は、落ち込む飯塚さん、佐藤さんを励ますように肩をたたいた後、着席して口火を切った。
「棄却と聞き、こんなはずではないと信じられなかった。肩すかしのような判決だ」と怒りをあらわにし、「飯塚さん、佐藤さんの思いを次につなげ、被害者のためにさらにがんばっていきたい」と控訴を見据え、自らを奮い立たせた。
原告団の団結を示すために作られたピンク色の腕飾りをまいた飯塚さんは、「裁判所は国の法的責任を認めてほしい。私たちにはもう時間がない。一刻も早い解決を」と声を絞り出した。佐藤さんは「法律を違憲だと認めながら、国には救済の責任がないなんて納得がいかない。前例がないならそれを作るのが裁判所の役割ではないか」と憤った。判決が出たら原告の義妹に電話するつもりだったが、「これでは伝えられない」と嘆いた。
中島裁判長は判決の最後で「令和の時代は差別なく幸福を追求できる社会になるように」と述べた。しかし、佐藤さんは語気を強めて訴えた。「いつの時代でも差別がない社会が当たり前でなくては。新しい判決を出すことこそが令和の時代ではないでしょうか」
障害者団体や支援団体からも疑問の声が上がった。東京からかけつけた日本障害者協議会の藤井克徳代表は「日本の障害者施策や人権施策の基準値が下がった」と感じた。「優生手術に対する謝罪を求める会」の大橋由香子さんは、リプロダクティブ権をめぐる法的議論の蓄積が少ないとした判決について、「1996年の母体保護法改定時に付帯決議でリプロダクティブ権に基づく施策の推進が求められている。それを蓄積がないというのはいかがなものか」と疑問を呈した。
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