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社説

広がる衆参同日選論 風に浮つく国会を戒める

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 夏の参院選に合わせて安倍晋三首相が今の通常国会で衆院を解散し、衆参同日選に踏み切るのではないかとの見方が政界に広がっている。

 衆院議員の任期は2021年秋まで。その直前に安倍首相の自民党総裁としての任期も来る。どうせそれまでに衆院選を行うのなら、景気後退が心配される今年10月の消費増税後や来夏の東京五輪後よりも、今、同日選を行った方が政権には得策だ--。そんな声が自民党内に強まっているからだ。

 仮に同日選となれば衆院に小選挙区比例代表並立制が導入されて以来初めてとなる。しかし異例の同日選まで実施して国民の信を問う緊急性や必要性が今あるだろうか。

2院の役割は異なる

 実際に自民党から聞こえてくるのは、有権者は二の次で「ここで勝てば首相は自民党総裁4選の可能性が出てくる」といった声ばかりだ。

 与野党ともに解散風にあおられて関心が同日選に集中し、国会の審議はおろそかになっている。国民にとってはその影響の方がはるかにマイナスではないだろうか。

 麻生太郎副総理兼財務相は4月末、今後の景気の見通しを踏まえ「衆院選をやるなら今年夏以外にない」と首相に同日選を進言したという。

 菅義偉官房長官も、野党が国会会期末に内閣不信任決議案を提出した場合には、安倍首相が衆院解散・総選挙によって国民に信を問う理由になるとの考えを示した。政権中枢のこうした言動が同日選論が拡大する要因となっている。

 首相は政権に返り咲いた後、2度衆院を解散した。14年は消費増税を延期する方針転換が理由だった。17年は消費増税分を社会保障だけでなく教育無償化などにも充てると唐突に発案し、それを理由とした。

 今回も消費税を絡めて同日選の大義名分に使うのではないかとの臆測が消えないのはそのためだ。

 加えて17年の総選挙では、首相は少子高齢化や、当時続いていた北朝鮮の核開発とミサイル発射の危機を強調して、「国難突破」のための解散だとも語った。

 確かに2度とも自民党は勝利した。だが17年に力説した「国難」はその後どうなったのか。首相はそれを総括もせずに、次々と目新しい政策を看板に掲げて政権維持を図ってきた。やはり2度の解散に大義は乏しかったということだろう。

 衆参同日選は過去、1980年と86年に行われた。いずれも自民党が大勝し、同日選は議員の個人後援会と業界団体の組織力を生かせる自民党が有利だと言われてきた。

 ただし、そもそも参院は衆院の足らざる点を補い、行き過ぎを防ぐという独自の役割が求められているはずだ。衆院を解散して同日選になった場合、国会には参院の半数しか議員が残らない問題もある。別々に選挙をするのが本来の姿である。

 しかも小選挙区制の導入以降、衆院選は有権者が政権を選択する選挙であり、参院選は次の衆院選の前に政権の現状を有権者が評価する中間選挙だと認識されてきている。

 同日選はその中間評価の機会を省いてしまう。中選挙区制時代と違い、衆院も有権者は2票を投じる。衆参で微妙に違う投票を同時にする複雑さを強いることになる。

まず予算委員会を開け

 自民党の二階俊博幹事長は「参院のための衆院解散はあり得ない」と語った。その通りだろう。ところが有利になりそうだという理由で自民党の参院側にも同日選を期待する声がある。参院の独自性と存在意義を自ら否定しているようなものだ。

 立憲民主党など野党も準備不足を見透かされたくないのか、「同日選を受けて立つ」と勇ましいが、自民党の党利党略と言える同日選論をまず、戒めるべきではないのか。

 日米貿易交渉やロシアとの北方領土交渉。首相が北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と前提なしで会談したいと言い出した拉致問題。なお「緩やかに回復している」という政府の景気判断等々、課題は多い。

 深刻な人口減少問題に関する議論も欠けている。森友・加計問題も解明はされたとは言えず、政府の統計不正問題では、不適切事例がさらに明らかになっているのが実態だ。

 こうした課題に対応するため、まずは今国会で久しく開かれていない衆参両院の予算委員会を早急に開くべきだ。解散風に浮ついている場合ではない。国会の役割をきちんと果たすよう強く求める。

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