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 20代後半から30代前半にかけて、私が関西で借りていた質素なワンルームマンションには、鈴木春信(1725?-1770) の「The Love Letter」という浮世絵がかかっていた。学生にありがちな事だが、私にはそれを額に入れて優雅に飾るお金はなかったので、粘着ラバーで四隅を直接壁にとめていた。

 30代半ばになって引っ越すことになった。残念ながらその絵は、新しい家のまっさらな壁にかけるにはあまりにすすけており、捨てるしかなかった。

 何年か後に、イギリスで19世紀の邸宅を修復して住むことになり、書斎も作った。その机の上に掛けるべき絵については考える必要はなかった。もちろん、「The Love Letter」である。今度はもっと大きく、美しく額に入ったものを。

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ダミアン・フラナガン

ダミアン・フラナガン(Damian Flanagan) 1969年英国生まれ。作家・評論家。ケンブリッジ大在学中の89~90年、東京と京都に留学。93~99年に神戸大で研究活動。日本文学の修士課程、博士課程を経て、2000年に博士号取得。現在、兵庫県西宮市とマンチェスターに住まいを持って著作活動している。著書に「世界文学のスーパースター夏目漱石」。

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