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転入・転出や死亡の届け出など行政手続きをすべてインターネットで行えるようにする「デジタル手続き法」が成立した。民間サービスも含め、煩雑な手続きを一度で済ませられるようにすることが柱だ。
具体的な運用は今年度から順次始まる。例えば引っ越しには多くの手続きが伴うが、ネットで住民票の移転手続きをすれば、電気やガス、水道の契約変更も済むようになる。
狙いは住民の利便性向上と行政事務の効率化だ。日本はインターネットの普及率などITインフラの整備が国際的にも高水準にあるわりに、行政手続きの電子化は遅れている。ITの活用を広げる法律の方向性は間違っていない。
本人による手続きであることを証明するために使われるのはマイナンバーカードだ。カードのICチップに入っている本人確認の電子証明書をパソコンやスマートフォンで読み取って申請する。
しかし、交付開始から3年以上たつカードの普及率はいまだに13%の低水準にとどまっている。
昨秋の内閣府の世論調査では、取得しない理由は複数回答で「必要性が感じられない」が58%に上った。
それなら、住民が便利さを実感できる手続きの電子化を進めれば、カードのありがたみが増し普及率は上がるはずだ。国はそう期待する。カードを普及させるため、個人番号を一人一人に知らせる紙製の「通知カード」の廃止も法律に盛り込んだ。
カードの普及促進は、住民の利便性向上につながるものでなくてはならない。カードの普及が目的になったのでは本末転倒にも見える。
カードを取得しない人の中には、個人情報の漏えいを心配する人もいる。この不安はマイナンバー制度導入時から根強く、法律によって国からカード取得を迫られていると感じる人がいるだろう。
また、高齢者などにはIT機器を使いこなせない人もいる。行政手続きの電子化が加速すると、置いていかれるような不安を覚えるかもしれない。
さまざまな不安を抱く住民への配慮が必要だ。国は情報漏えいを防ぐ対策を丁寧に説明するとともに、IT機器に慣れるための支援をしていかなければならない。