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社説

国有林伐採の民間開放 かえって森を荒らす恐れ

 全国の森林の約3割を占める国有林を長期間、大規模に伐採・販売する権利を民間業者に与える国有林野管理経営法改正案が、与党などの賛成で今週中に成立する見通しだ。

     現状は1カ所当たり数ヘクタールの伐採面積を数百ヘクタールに拡大した上で、公募した業者に最長50年間、有償で独占的な「樹木採取権」を与える内容だ。

     国有林を活用して原木の供給を拡大し、住宅などへの国産材利用を促して、林業の成長産業化を目指すという。

     ただ、国内の林業者の9割は小規模・零細だ。従来の100倍もの大規模伐採を手掛けるのは難しい。「意欲と能力のある」業者を後押しして林業が盛り上がれば、地方活性化にも役立つと政府は説明するが、外資を含む大企業の参入が進む可能性が高い。

     最も懸念されるのは、改正案が業者に伐採後の再造林を義務付けていないことだ。政府は契約で再造林を申し入れると説明する。しかし、罰則もない中、業者が多大な手間が掛かる再造林を行う保証はない。木材市況次第では、業者が撤退して「ハゲ山」だけが残る懸念もある。

     現状の数ヘクタール程度の再造林でも、苗木がシカに食われたり雨で流されたりして育たなくなった「ハゲ山」があちこちにある。農林水産省は大規模伐採を解禁しても「最終的に国の責任で森林を再生する」と強調する。だが、同省は再造林の失敗例がどれだけあるかすら把握できておらず、約束が守れるかは疑わしい。

     国有林は、政府が過去に経営に失敗して巨額損失を出し、管理する人員を大幅に減らしたため、雑木の除去や間伐などの手入れが行き届いていない。

     政府の成長戦略を検討する未来投資会議では、竹中平蔵氏ら「規制改革派」がこうした状況を踏まえ、国有林の「民間開放」を提唱し、今回の改正案につながった。農水産業への企業参入促進や、水道民営化などと同様に「民間開放」に問題解決を頼る発想だ。

     国有林は水源の涵養(かんよう)や、二酸化炭素の吸収、生物の多様性確保、防災、景観維持など多面的な機能を果たしている。乱伐されれば、簡単には元に戻せない。経済優先の論理で扱うことには疑問を呈さざるを得ない。

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