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社説

天安門事件から30年 「異質な大国」誕生の原点

 民主化を求めて天安門広場に集結した学生らが中国軍に弾圧され、多くの死傷者を出した1989年6月4日の天安門事件から30年を迎えた。中国は世界の第2の経済大国になったが、政治改革の兆しはなく、むしろ国民の監視を強めている。

     事件で政治改革の動きがストップした結果、民主化を伴わない大国が誕生した。中国は現在の米中対立にも、この異質さが影響していることを自覚すべきだ。

     民主化運動は開明派の指導者だった胡耀邦(こようほう)氏死去をきっかけに広がり、100万人以上が参加した。当時の趙紫陽(ちょうしよう)総書記は学生らに同情的だったが、最高指導者のトウ小平氏は戒厳令布告を指示し、弾圧に踏み切った。趙氏は事件後、解任された。

     一方で戦車の前に立ちふさがる男性の映像などが衛星放送を通じて世界に伝えられ、社会主義体制の非情さを世界に見せつけた。同年11月の「ベルリンの壁」崩壊など東欧の変革にも影響を与えたといわれる。

     中国自身の変革にはつながらなかった。トウ氏はソ連崩壊直後の92年、全面的な市場経済導入に踏み切り、国民生活を向上させることで政権の正統性を保とうとした。

     その後の中国は経済優先の実利主義で高度成長路線をひた走ってきた。2001年の世界貿易機関(WTO)加盟後はグローバル化の恩恵を受け、「世界の工場」となった。

     しかし、高度成長が終わり、政治改革に手をつけなかったツケが回ってくる時代に入ったのではないか。

     近年、権利意識に目覚めた住民が権力者の不正や環境汚染に抗議する事件は後を絶たない。習近平政権は人権派の弁護士を拘束し、人工知能(AI)利用の監視強化で批判を封じ込めようとしている。ネットで天安門事件の情報を調べようとしてもAIが自動的に排除する実情はSF的な全体主義国家を思わせる。

     米国ではトランプ政権だけでなく、野党・民主党にも中国批判が渦巻く。価値観を共有しようとしない大国への拒否感の表れだろう。

     中国国内にも「反革命暴乱」とされた天安門事件の再評価、学生らの名誉回復を求める声は根強い。習政権がそうした声に耳を傾けない限り、「異質な大国」への国際社会の警戒感は簡単にはなくなるまい。

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